マンガが大好きで、1カ月で買った冊数の最高記録は「68冊」。そのときは、「さすがに母にちょっと怒られました」と照れ笑いで明かす浅川梨奈さん。現在の蔵書は1,000冊を超え本棚に入りきらなくなるほどで、特に少女マンガに夢中になっているそうです。「少女マンガソムリエ」を目指して(!?)日々邁進されている浅川さんに、シチュエーション別のおすすめ作品や、実写化作品への想いなどを語っていただきました。
※物語の内容に触れる描写がありますのでご注意ください
撮影:KOBA 取材・文:遠藤政樹
記事制作:オリコンNewS
マンガ好きの原点と“意外な”選び方
――“少女マンガ愛”あふれる浅川さんですが、いつごろから夢中になってマンガを読んでいたのでしょうか。マンガとの出会いを教えてください。
小学生のころ、いとこの影響で少年マンガから読み始めました。ただ、当初は友情ものなどのテイストが私にはあまり刺さらなくて、その後自分で少女マンガを開拓していきました。小学生の時、初めて全巻そろえたのが『きらりん☆レボリューション』(中原杏/小学館)でした。本格的にハマり始めたのは中学生の時で、ふと手に取った『スイッチガール!!』(あいだ夏波/集英社)を読んだら面白かったんです。
あいだ夏波『スイッチガール!!①』集英社、2007年(右) Amazon
ほかにも『会長はメイド様!』(藤原ヒロ/白泉社)や『ホリミヤ』(原作:HERO、画:萩原ダイスケ/スクウェア・エニックス)などいろいろ読みました。そのうち同じマンガ家さんの作品でも、ジャンルや出版社によっても色が違うことに気づき、中学2年生になるころにはマンガ大好きになっていました。
――少年マンガが入り口であり、『スイッチガール!!』が少女マンガ道の原点となったのですね。『スイッチガール!!』はどのようにして手に取ったのでしょうか?
実写ドラマ化(2011年~13年。フジテレビTWOで放送)で面白そうだと思ったのと、友だちが好きなマンガだったこともあり、「読んでみようかな」と思って3巻まで買ったら面白かったんです。中学生のお小遣いでは“大人買い”はできなかったので、1カ月に1~2冊ずつ買って集めました。
――先が読みたくてもお小遣いの範囲にとどめるのは、誰しも経験があるでしょうね。少女マンガを選ぶ際、どんなポイントに注目していますか?
作家さんや絵のタッチ、ジャンルを挙げる人が大半だと思いますが、私は「出版社」別で選ぶことも多いです。なかでもKC(講談社コミックス)の少女マンガは、例えばキャラクターが高校生でも大人な感じのテイストが多い印象で、勝手ながら私好みの作品が多いですね。
KC以外だと『マーガレット』(集英社)や『りぼん』(集英社)の作品も大好きです。ちょっと童心に返りたいときは『Sho-Comi』(小学館)を買うこともあります。そのときの気分や出版社、絵のテイストを見て決めますが、基本的にはストーリーよりも絵で選ぶことが多いです。
少女マンガが好きすぎて……理想の男性像のハードルが“激高”に
――出版社で選ぶというのは珍しいですが、いわゆる“箱推し”(アイドルグループなどで、個々のメンバーを推すのではなく、グループ全体を推すこと)に近いイメージを感じます。そうした中で、あえて好きなジャンルを挙げるとしたら?
大人が楽しめる恋愛モノですね。特に、ラブシーンを丁寧にコマ割りしたり、あるいは1ページで大きくドンと使ったりして、しっかりこだわって描いているマンガ家さんが好きです。
――なるほど。では浅川さん的に、恋愛モノに「これだけは欠かせない!」というポイントは?
美しいキスシーン。唇と唇が触れるまでの描写を丁寧に描いているマンガ家さんが好きです。顔と顔が近づいていき……みたいなコマをちゃんと描いてくれて、しっかり横顔を見せてくれる描写が好き。恋愛モノでキスしてくれないと「う~ん……」って気分になっちゃいます(笑)。
――こだわりが伝わります。恋愛モノを読むときはどのような視点で楽しみますか? やはりヒロインに感情移入するのでしょうか。
「こういう男の子に、こんなこと言われたい!」という気持ちや、「この女の子のセリフ、言ってみたい~!」という気持ちはあります。だけど、第三者的な目線で客観的に読んでいる自分もいます。少女マンガだと、自分が主人公になって想像しながら読む人が多いと思いますが、さらにそれを常にモニタリングしているというか、(登場人物の気分になって)「見ちゃダメだよ!」って言いながら、客観的に見ている感じかな(笑)。
――複雑ですね……! 今まで読んだ作品の中で“ガチ恋”した男性キャラクターはいますか?
マンガではいないですね。「こういう男の子がいたらいいな」というのはあるのですが、それが構築されすぎたことで、今の私の理想は「いない人」になっています(笑)。
――それは理想が高すぎて無理ということでしょうか?
無理だと思いますね(笑)。ツンデレで、Sッ気が多くてみんなの前では結構乱暴に扱ってくるけど、2人きりのときはめちゃめちゃ甘えてくる。束縛強めで、ワガママなところもあって母性をくすぐられてかわいい……みたいな(笑)。
――(笑)。条件がすごいです。
さらに、その性格だけでもダメで、そこに顔が伴っていることも必要。総合的な判断になります。だから、もはやマンガでもいないんです。難しいですね(苦笑)。
浅川梨奈が選ぶテーマ別おすすめマンガ3選
――では、そんな浅川さんに、3つのテーマに沿ったおすすめの少女マンガを選んでもらいました。まずは「マンガならではの非日常を味わいたい」ときにイチ推しの作品をお願いします。
『熱愛プリンス お兄ちゃんはキミが好き』(青月まどか/宙出版)
母親の再婚により、主人公の女子高生・天宮(あまみや)まつりは、人気三つ子アイドルである遥(はるか)、梓(あずさ)、理人(りひと)の義理の妹に。さらに登場するアイドルたちも含め、まつりはみんなから愛されてしまい大変! いわゆる“逆ハーレム”状態に。
――主人公を取り巻く逆ハーレム、しかも相手がアイドルたち。たしかに非日常というテーマにぴったりですね。
現実では絶対にありえない展開ですけど、少女マンガタッチの線画がすごくきれい。それに、自分の好きな芸能人やアイドルに好意を寄せられるなんて憧れじゃないですか。そういう女の子の“煩悩”が詰めこまれた作品で、夢があるなと思います。ヒロインは普通の高校生の女の子なので、自分の身に起こったら、と想像できる……めちゃめちゃいいなと思います。
――美形たちにモテモテで、甘い気分が味わえそうです。続いてのテーマは「少女マンガならではの美しさ、華やかさを堪能したいとき。絵を眺めているだけで幸せになれる作品」です。
作品というよりも先生推しになっちゃいますが、水波風南(みなみ・かなん)先生と水瀬藍(みなせ・あい)先生の作品です。どちらもストーリーがしっかりしているのはもちろん、少女マンガの「ザ・王道」な軸がありつつ、なによりも絵がきれいなのが良いです。水波先生の絵はデジタル水彩画のような雰囲気で、原色とパステルを混ぜたような現代風の色づかい。水瀬先生はアナログな水彩画のきれいさがあって、お二方とも色の塗り方やカラー絵のタッチがすごくきれい。しかもどの作品を読んでも面白いです。
――どれも面白いということで選ぶのが難しいかもしれませんが、それぞれの先生のオススメ作品をお願いします。
まず水瀬先生は、2019年に完結した『きっと愛だから、いらない』です。本当に泣ける作品です。
『きっと愛だから、いらない』(水瀬藍/小学館)
――男子高校生でバンドマンの吉良光汰(きら・こうた)とヒロインの女子高生・高宮円花(たかみや・まどか)が出会って……という内容ですね。
2人は付き合うことになるのですが、円花がプレイボーイでチャラい光汰を選んだのは、円花が“余命宣告をされている”から。残された時間で恋愛をしたいと願い、「この人なら、いろんな人と遊んでいるから、もし自分がいなくなっても大丈夫だろう」と思うのですが、2人とも本気になってしまって……そんな切ない話なんです。その切ないテイストと絵のタッチがマッチしすぎて、私、めちゃめちゃ泣きました。
――泣ける名作少女マンガ、いいですね……! 続いて、水波先生のおすすめ作品もお願いします。
最近だと『泡恋』が面白かったです。
『泡恋』(水波風南/小学館)
――恋に憧れ彼氏がほしいと思っている牧野由花(まきの・ゆか)と、恋の苦さを知っていて、態度が最悪&冷たい七瀬賢太郎(ななせ・けんたろう)。正反対の2人が繰り広げる青春ラブストーリーです。
ヒロインは恋愛経験が少なく、恋に憧れて“高校デビュー”したような子なのですが、デビューしたてだからちょっと地味なんです。そんな子がキラキラした男の子と出会って恋に落ち、男の子の方も「好きかもしれない」となるけど、実は……と、切なさとキュンキュンで複雑な気持ちになって、いつの間にか入り込んじゃいます。
水波先生の作品は感情移入させるのが上手いんです。男の子の気持ちにもなるし、女の子の気持ちにもなれる。私が唯一と言っていいほど、第三者目線ではなく感情移入して読むマンガ家さんかもしれないですね。
――そこまで物語に入り込めるというのは、かなり説得力のある仕掛けがされているのでしょうね。そして最後は、「大笑いしたい! コメディー要素強めの作品」を教えてください。
はい! 幸田もも子先生の作品です。
『センセイ君主』(幸田もも子/集英社)
――『ヒロイン失格』や『センセイ君主』(共に集英社)など、多くの実写化作品があり、少女マンガのコメディージャンルを代表するのが幸田先生ですね。
『センセイ君主』はめちゃくちゃ面白いです。幸田先生の作品は良い意味で“ツッコミどころ”が多いのが魅力です。最初からストレートに恋愛、というわけではなく、思ってもみないところから始まり、ヒロインと男の子の関係を、段階を踏みながら丁寧に描いているのが好みです。
――恋愛では、そうした過程が見られるのも楽しみな部分ですね。
実は、幸田先生とは個人的に仲良くさせていただいているのですが、先生は私や知り合いに対して、例えば自撮りについて「いま自撮りってどういうふうにするの?」とか「片手で撮るの?」「写メ撮るって言う?」みたいに、若い子のトレンドを取り入れようとリサーチされる方なんです。そういうリアルさを丁寧に研究しながらマンガを描いていらっしゃるのも、面白さにつながっているのだと勝手ながら思っています。『センセイ君主』は、先生とたくさん質問のやりとりをした作品でもあるし、私の友だちも一コマ出ているので、勝手に思い入れを感じていますね(笑)。
実写化作品を見た方も多いと思いますが、見てわかるとおり、どの作品のヒロインも変顔をさせられるんです。“かわいくない顔”でさえ愛おしく思えてくるのがすごいです。
今、幸田先生が描いていらっしゃる作品で「“梨奈ちゃんっぽいな”って思うのがある」と言ってくれているので、一緒にお仕事できたら嬉しいな、という思いはあります。
紙のマンガにこだわる理由は、作者と出版社への“感謝”
――実現を楽しみにしています。ところで、以前Twitterで写真をアップされて話題となった「自慢の本棚」ですが、収納法にこだわりはありますか? 現在の本棚の状況も教えてください。
家の本棚は「出版社別」「先生の名前順」に並べています。ただ、今はもう新しく買ったマンガが入らなくなっちゃって、積み重ねている状態。そろそろどうにかしたいなとは思ってはいるのですが……。
――収納場所には苦労しますよね。どのくらい溢れているのでしょう?
本棚に入りきらなくなり、積み重ねた量を見て自分で引いてしまいました(苦笑)。「片付けてから!」と思い、2カ月ぐらい新しいマンガを買っていなくて。本棚に1000冊、入らない分が100冊以上あると思います。ただ、今使っている本棚はすごく気に入っていて……困っています。
家具って、洋服ダンスに机、テレビとテレビ台、それとベッド、あとはソファくらいが一般的ですよね。うちはそれらにプラスして、大きい本棚があるからもう壁が見えない(笑)。
――壁が家具に囲まれ、さらにいくら大好きとは言え本やマンガに囲まれていると、さすがに圧迫感がありそうですね。
そうなんです。なにせ今はマンガが積み重なっているので、圧迫されています(笑)。
――浅川さんは電子書籍も読むものの、基本は紙派と聞いています。紙の本にこだわる理由を教えてください。
電子書籍はスペースを取らないし、どこでも読めるのがいいのですが、紙のマンガ本の良さは、やっぱり実際にページをめくりながら読むところ。あとはマンガ家さんに少しでも還元できるようにと思い、マンガは紙の単行本でそろえると決めています。
――そうした理由があったのですね。ある意味で “投資”的な意味合いもあったとは。
紙へのこだわりはマンガ家さんへの感謝と、出版社への感謝。「素敵なものを描いてくださり、そして出版してくださってありがとうございます!」という気持ちを込めています。
実写化作品での役作りは、とことんストイックに
――少女マンガ愛が止まない浅川さんですが、ご自身もマンガ原作のドラマや映画に出演される機会も多いです。一マンガファンとしてどう感じられていますか。
自分の好きな作品だと、「他の人が演じるくらいなら自分がやりたい」と感じますね。作品が好きで、マンガというものが好きで、マンガ家さんをリスペクトしているので、実写化される際は「もっとこうできるのに」と思うこともあります。なので、自分が出演させてもらえることは、とても嬉しいです。ただ、実写化されることへの風当たりの強さもわかっていますし、だからこそ「私も同じ気持ちでいるから頑張る!」という気持ちにもなりますね。
――好きだからこそ、良い部分もそうでない部分もよく見えることもありそうです。実写化作品で意識していることはありますか?
原作マンガをめちゃめちゃ読み込むのはもちろん、声優さんが声を担当している作品の場合、そちらも必ずチェックします。やはり、キャラクターの声は一番大事だと思っているので、自分の中でのイメージはありつつ、先にアニメ化されていた場合は声優さんの演技がそのキャラクターになる。実写が先だったらいいのですが、アニメが先であまりにかけ離れすぎていると、自分自身の違和感が拭えなくなってしまうので、できるだけ近づけたいなって。声優さんへのリスペクトもあるからこそ、常に意識しています。
――おっしゃることはすごくよくわかりますが、とても難しい作業に感じます。
役作りのためには「読む」「見る」「聞く」を全てやります。作者さんがキャラクターについて語るインタビューやSNSでのつぶやきなども、可能な限り見るようにしています。
ただ、演じるキャラクターの身長が、私より低いことが多くて……。(出演した)『僕らは恋がヘタすぎる』(ABCテレビ)でも、藤原花(ふじわら・はな)役の川島海荷ちゃんと、私が演じた片山(かたやま)みずきの身長差が、原作とは逆なんです。映画『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』でもそうでしたが、身長だけはどうにもならないので、そこだけは「小さくなれなくてごめんなさい……」と思いながらやっています。
――難しい悩みですが、ディテールを近づけるための努力は、きっと視聴者の方にも伝わっていると思います。浅川さんは現在、Kis-My-Ft2の北山宏光さんが原案、二階堂高嗣さんが主演を務める配信ドラマ『快感インストール』(dTV)に出演中です。二階堂さん演じるタカが、とある特殊能力を持ってしまう物語ですが、マンガチックな世界観はいかがですか。
もう、まさに「男の子」って感じですよね(笑)。台本を読んだ時にこんなことで笑ったり、盛り上がるのはかわいいなって。コメディータッチに描いていることもあり、見やすそうだなと思いました。そして、二階堂さんたちが演じているのを実際に見て「これは面白い!」と確信できました。
――浅川さんが演じているのは、タカが恋に落ちる大学のマドンナ・ノゾミ。どんな役作りをされたのでしょうか?
ノゾミは女優であり、ミスコンにも出場しています。実際にミスコンに出場している女の子たちのSNSや過去の関連資料を見て、写真の撮られ方、笑い方、動画の映り方、コメントの話し方などを参考にさせてもらいました。ツンケンしたマドンナというよりも、等身大で、これから芸能界で頑張ろうとしている雰囲気を意識しました。
――ちなみに、もし浅川さんが原案を手がけるとしたら、どんな内容にしてみたいですか?
ダークサイドというか……ふびんなキャラクターが好きなので、三角関係でも報われない男の子を好きになっちゃうタイプ。そういう男の子を出したいですね。カップルが盛り上がっている中、取り残されたほうの男の子にフィーチャーして、アップで切ない表情を撮りたい。現実での願望はまったくないのですが、物語の世界観ではドロドロ系が大好きなので、そういうのもいいですね。
“大切なこと”は少女マンガに詰まっている
――では今後、挑戦してみたい夢があれば教えてください。
声のお仕事ですね。アニメやマンガ、ゲームなどがずっと好きで、声を吹き込んでくださる声優さんって偉大で素敵だなと思っています。だから、いつかキャラクター名の下に「CV:浅川梨奈」と入るのが夢です。まずは通行人からやってみたいですね。レコーディングブースって特別なイメージがありますし、人が入れ替わり立ち替わりマイクの前に立ってセリフを言うのを経験してみたいです。
――最後に、浅川さんにとって「少女マンガとは?」
浅川梨奈にとって、少女マンガとは「教科書」です。特に、お芝居という仕事をしていると、経験できないことってたくさんあります。例えば、デートに行くとか、手をつないで外を歩くとか。できないからこそ、少女マンガで登場人物たちの反応を見て学ぶこともあるし、現実に「こうだったらいいな」と想像力もかき立てられたりもするので、まさに人生の教科書です。
スペシャル動画
プロフィール
浅川梨奈(あさかわ・なな)
1999年4月3日生まれ、埼玉県出身。映画『14の夜』で長編映画デビュー後、数多くの映像作品に出演。出演作に映画『honey』『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』、ドラマ『女子高生の無駄づかい』(テレビ朝日系)『僕らは恋がヘタすぎる』(ABCテレビ)など。
作品情報
『快感インストール』(dTVにて配信中)
Kis-My-Ft2による配信ドラマ企画第2弾で、北山宏光が原案のオリジナルストーリー。二階堂高嗣演じる恋愛未経験男子・タカが特殊能力を手に入れ、北山演じる親友・カズマと奮闘する物語。二階堂は、ヒロインを演じる浅川梨奈と初のキスシーンにも挑戦している。手に入れた特殊能力を使いこなそうとタカとカズマがおバカな行動に出る、“青春ラブコメディー”となっている。
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