瑛人を作る“3つの言葉”…ハンバーガー、仲間、音楽 「香水のヒモ」から、いつか「瑛人となら結婚OK」と言われたい

瑛人

2020年、『香水』でブレイクを果たしたミュージシャン・瑛人さん。SNSや動画投稿サイトを中心としたヒットの図式や、飄々としたアーティスト・イメージも含めて、すべてが「今」としか言いようのない彼の存在は、大きな衝撃を日本のポップスに与えました。LINE NEWS AWARDS 2020のアイドル・アーティスト部門を受賞したことにも象徴されるように、あらゆる意味で「特異な」一年を過ごした瑛人さんは、今何を思っているのでしょうか? 2021年1月1日に1stアルバム『すっからかん』をリリースする彼の素顔を、「ハンバーガー」「仲間」「音楽」の3つのトピックで紐解きます。

撮影:尾鷲陽介 取材・文:小田部仁

 

瑛人

保土ヶ谷からロサンゼルスまで、ハンバーガーを食べ歩いて

――2020年は『香水』の大ヒットでブレイクされて、本当に大忙しだったと思います。今日も先ほどまで、『めざましテレビ』に出演されていたそうですね。お時間いただき、ありがとうございます!

あ、こちらこそです! なんでも聞いてください(笑)!

 

香水 / 瑛人 (Official Music Video)

――最初から、ちょっとトリッキーな質問で恐縮ですが、Fanthology!ではアーティストの「大好きなもの」からアーティストの素顔に迫るというコンセプトがありまして。瑛人さんはとにかくハンバーガーがお好きだそうですが、そもそも何故そんなに好きになったのでしょうか?

ハンバーガーの質問(笑)! そうですね……食べ物の中でも一番って言っていいぐらい好きです。好きになった理由は、小学生の時にマクドナルドでビッグマックを食べて「こんなに美味しいものがあるのか!」って思ったことがきっかけですね。バーガーと炭酸飲料、あるいはバドワイザーとかがあれば、もう最高です。

瑛人

――いいですね! 自分史上ベストなバーガー屋さんはどこですか?

ベストかぁ……やっぱり、PENNY'S DINER(横浜市中区にあるアメリカン・ダイナー。瑛人さんはデビュー前後にかけて、この店でアルバイトしていた)のチーズバーガーかな。あと、都内だと東京タワーの近くにあるMUNCH'S BURGER SHACKはめちゃくちゃおいしいですよ。大好きですね。トランプ大統領も来日したときに食べたバーガーらしいです。

――PENNY'S DINERでの一番の思い出ってなんですか? 瑛人さんの曲の『香水』に出てくるドルチェ&ガッバーナの「香水」の持ち主は実はこのお店の店長さんだった、というのは有名な話ですが。

一番の思い出は、年末のお休みの時期に社員旅行で、みんなでロサンゼルスに行ったことですね。当時、僕はバイトだったんですけど、なぜか連れて行ってもらって。現地でもIn-N-Out Burger(アメリカ・カリフォルニア州発祥のハンバーガーチェーン)で、バーガー食べましたよ(笑)。

――ちなみに、最近はハンバーガー食べました? これだけブレイクすると、自由にハンバーガー屋さんを訪れるのもなかなか難しいのかなと。

いやいや、そんなことないです。つい最近も原宿のお店でチーズバーガー食べましたよ! (思い出しつつ)……おいしかったなぁ。

瑛人

本当にお前が、『香水』歌ってんの?――家族・友人の変わらなさが頼りに

――お忙しい中でも、バーガー愛を保ち続けていらっしゃるようでなによりです。話は変わるのですが、瑛人さんはご友人とお酒なんかを呑みながら、よく「遊び」でセッションをされるそうですね。それって今もできていますか?

一昨日もやりましたよ。動画ありますけど、見ます?(携帯を取り出し、動画を再生する)

瑛人

――うわ、めちゃくちゃ素敵ですね。アコースティック・ギターにあわせて、みなさん歌ったり、ラップしたりして。リラックスした雰囲気で。

そうそう。これやってるときは、めちゃくちゃリラックスしてますね。呑んでる場にギターがあったりすると「弾いてよ!」ってなって、急に始まることが多いんですけど。適当にコードをループで弾いてもらいながら、そこに歌のせたり、ラップのせたりする感じでやってます。

――こういうセッションって、瑛人さんの楽曲制作のプロセスにも近いところがあると思うのですが、昔からやっていたんですか?

生楽器でセッションっぽい形でやりはじめたのは、20歳の頃、音楽の専門学校に入って楽器弾ける仲間ができてからですかね。でも、高校生の頃から似たようなことはやってて。休み時間に2〜3人の仲間で、携帯からYouTubeで見つけたビートを適当に流して、その上に言葉をのせていくみたいなことはやってました。

――へー、サイファー(ヒップホップ用語で、複数人で輪になり即興ラップをすること)的な感じで。

そう、サイファーですよね。でも、俺はその場で韻を踏んだりとか、ラップがすぐに出てくる、頭の回転が速いタイプじゃなかったので。最初っから歌とかメロディを歌うスタイルで勝負してましたね。

瑛人

――瑛人さんの音楽的な原体験は、お兄さんがカラオケで歌ってらっしゃった清水翔太さんの『HOME』に感動されたことにあるそうですが、やっぱりご兄弟からの音楽的な影響って大きいですか? ちなみに、一番人生で一番ヘビロテした曲は何ですか?

兄貴達からの影響は大きいかもしれないですね。ヒップホップとかR&Bに興味をもったのも兄貴達が聴いてたからだし。人生で一番ヘビロテした楽曲は……なにかなぁ……Akon(エイコン)の『Don't Matter』かな。<Nobody wanna see us together/But it don't matter, no>(口ずさむ)。めちゃくちゃいい曲ですよね。

Don't Matter (Official Music Video)/Akon セネガル出身、アメリカのR&Bシンガーソングライター/音楽プロデューサー。

――Akonは2000年代に精力的に活動していたアーティストですが、そう考えると、1997年生まれの瑛人さんが彼を好きになるのは少し早熟な感じがしますね。

あぁ、でもそうかもしれませんね。ハンバーガー屋の店長さんもそうだったんですけど、俺、10個ぐらい年上の先輩と仲良くなって色々教えてもらったり、遊んだりするケースが多くて。逆に年が近い先輩とはあんまり仲良くなれないんですけど(笑)。

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――ご家族やご友人は、今年の瑛人さんのブレイクをすごく喜んでいるんじゃないですか?

そうですねぇ。最初は「スゴい!」とか「いいねぇ!」って言ってましたけど……最近はあんまりそういう話しないっすね(笑)。この間もみんなで飲みに行ったお店で『香水』が流れてたんですけど、誰も何の反応もコメントもせずに普通に会話してて。だから「あー、みんな、そういう感じね」って思いました(笑)。

――周囲の人たちは、瑛人さんが有名になってもあまり変わらずにいてくれているんですね。

全然変わらないですね。ちょっとめんどくさいなって人もいますけど。友達からはいまだに「本当にお前が『香水』歌ってんの?」って言われたりします(笑)。……まぁ、いつもちんちん出したりとか、変なこと言ったりしてる人間なんで、自分と曲とが結びつかないのかもしれないです(笑)。

――そういう変わらない態度で接してくれることが頼りになりますよね。

なってますね。みんな、なんだかんだ「体調に気をつけてね」とか「身体、壊さないようにね」とか、気にかけてくれるので。本当にありがたいです。

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ネガティヴな思いも、最後にハッピーになればいい

――1月にリリースされる1stアルバム『すっからかん』についてもお話を伺います。このアルバム、本当に素晴らしい内容で。レゲエからソウル、ロックに至るまで、その幅広い音楽性もそうなんですが、このアルバムを聴くと瑛人さんが、ただ『香水』で偶然売れただけじゃない、深みのあるオリジナリティをもったアーティストなんだということがよくわかる作品になっていると思うんですよね。

おー、やったー! イエーイ! 嬉しい! よろしくおねがいします(笑)!

――(笑)。自分は『ハッピーになれよ』(3曲目)って曲が、すごく好きで。この曲って、両親の離婚を題材にすべてを飲み込んだ上で「幸せになれ」という祈りを捧げる楽曲じゃないですか。「香水」もそうだけど、瑛人さんの楽曲で扱われるテーマって「切なさ」や「悲しさ」に満ちていますよね。これってどうしてなんですか?

うーん、なんでだろうな。あんまりそういうことに自覚的じゃないし、考えたこともないんですけど……。『ハッピーになれよ』って曲に関して言うと、この曲は小学生の頃の自分とコラボレーションしているような感覚なんですよ。

――というのは?

子どもの頃に両親が離婚したんですけど、曲の歌詞通り、毎週日曜日に父ちゃんの家に野球のグローブを持って遊びに行ってたんですよ。で、ある時、父ちゃんに彼女がいるってことがわかって。それを母ちゃんに教えたいんだけど、普通に言葉にすると言いづらいから歌で伝えようと思って。〈ハッピーになれよ〉って、ずっと母ちゃんにお風呂場で歌ってあげていたんですよね。

全然メロディは今と違うんですけど。そういう実際の体験を歌にしていて。だけど言われてみれば、なんで〈ハッピー〉って言葉をあのとき使ったのかはわからないですね。勇気づけたり、慰めたかったのかな。

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――曲のメッセージとしてはポジティヴなんだけど、核の部分には「切なさ」や「悲しさ」もっといえば「諦め」のようなものがある気がするんですね。

そうだなぁ……自分がそういう性格だから、としか言えないですね(笑)。楽しいだけの曲も全然作ってみたいんですけど、やっぱり悲しい思い出とか切ない記憶の方が歌の題材にはなりやすいんですよね。でも、その時その時の感じた気持ちを大切にそのまま歌にしたいなと思って曲は作ってますね。

――アルバムの本編ラストを飾る『俺は俺で生きてるよ』も素晴らしい楽曲で。〈俺は俺で生きてるよ/だから何も邪魔をするな/なんて言葉いわないからずっと隣にいてよ〉という歌詞は「いらだち」と「愛している」がどちらも含まれた、今の瑛人さんの気持ちの素直な現れなのかなって思いました。

あぁ、なるほど。でも、この曲は『香水』よりも前に作った曲なんですよ。だから、この一年のブレイクに対する思いとかっていうよりは、むしろ音楽活動がまだ軌道に乗っていない「どうすんだよ、これから」って悩んでる時の気持ちが反映されてるんです。みんなが大学行ったり、就職したりしていて、地に足を付けて生きている時に、僕は夢を追っていて。周りの人に割と好き勝手にいろんなことを言われたりしたんですよ。その時の「なんだよ!」って思いがこもってますね。

瑛人

――ネットとかを見ていると『香水』のヒットによって、瑛人さんって良くも悪くも色んな角度で話題になってるじゃないですか。思いもよらないことを言われたりすることも増えたと思うんですが、そういう状況にフラストレーションを覚えたりします?

あんまりイライラしたり、ムカついたりしないんですよね(笑)。あ、でも、一瞬だけ思った時期はあって。その時の気持ちは『好きにすればいいさ』(10曲目)って曲になりました。〈I don't give a shit〉っていう歌詞は、まさにそれで。「俺は気にしねえよ」というか「知らねえよ」って意味なんですけど。悪口とか好き勝手なことを言ってる人たちと同等にはなりたくないって常々思ってて。

でも、ただ悪口でその人たちに対するメッセージを終わらせるんじゃなくて、そういうことを言ってる人も、そうじゃない人もそれぞれの場所で輝いてほしいって意味を込めて〈Let your light shine〉って歌詞を入れてるんです。

瑛人

――なるほど。きちんとポジティヴなメッセージに変換しているところが素晴らしいですね。

でも、独りよがりな表現になってないかなぁ……って心配になったりもしますよ、正直(と、言いながら、傍らにあったギターをいじり始める)。

――いや、全然独りよがりじゃないと思いますけど……って、ギター弾いてくれるんですか?

こうやってただただ話してるのもアレなんで、一曲歌いましょうか?

――ええ〜!! いいんですか? 

瑛人

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ギターを持った瞬間、水を得た魚のような顔になる瑛人さん

さっき話した内容にもつながる曲だと思うんですけど、『HIPHOPは歌えない』を。

――わー! ありがとうございます!

なんと、即興で演奏してくださいました!(動画冒頭にその模様を一部収録しています)

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「定着」することへの覚悟と意思、一発屋では終わらない

――大変贅沢な体験をさせていただきました。曲中の〈今日も誰かに言われてる お前はただのフェイクだと〉という歌詞が先程のお話と響き合うなぁと思って聴いていました。瑛人さんの楽曲って改めて考えてみると、未来やむやみやたらな希望を歌うのではなくて「今・ここ」をしっかりと捉えようとしていますよね。

視野が全然広くないんですよね(笑)。遠い先のことを考えられるほど、頭が回るタイプじゃないし。未来のことも「次に楽しいことがあるのはいつだろう?」ぐらいのことしか考えないから。先のこととか、本当にわからないですしね。でも、一発屋で終わりたくないなとは思ってますよ。ちゃんと、アーティストとして定着していきたいなって。

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瑛人

――「定着」っていうのはファンベースがあって、ショービズの世界の中で自分の居場所がきちんとあるというような意味ですかね?

そうですね。やっぱり、僕がアーティストとして定着すればいろんな人が安心するんじゃないかなって。音楽的な意味でも、恋愛的な意味でも、これからお付き合いする人との関係を考えると(笑)。相手のご両親も「瑛人となら、結婚してもいいよ」って言ってもらえるんじゃないかなって(笑)。

瑛人

――LINE NEWS AWARDS 2020のアイドル・アーティスト部門を受賞されました。授賞式では、今年の漢字を聞かれて「凄」と答えられていましたが、激動の一年を通して、ご自身で自分を「凄かった」「褒めてあげたい」と思うことがあれば教えてください。

うーん、そうですね。みんなからよく「楽しくやれてる?」って聞かれるんですけど、今の所、全然楽しく出来てるんですよ(笑)。変なこと、嫌なこととか、そういうのに負けてない。っていうか、みんなが思うほど嫌な目にもあってないんですよ(笑)。「楽しんでやれている」ってことだけは自分で自分を褒めてあげたいですね。

――それは、何よりですね! ちなみにこの一年で一番変わったことはなんですか?

そうだなぁ、前まではバイトで給料が出ても、全然お金を貯められたことがなかったけど、今はちゃんと口座にお金がある……これは大きな変化ですよ。人生で初めての経験です(笑)。

――大事なことですよね(笑)。最後に、2021年の抱負を聞かせてください!

今はまだまだ『香水』だけが売れてる状態で、自分はいわば「『香水』のヒモ」みたいなものだと思うので、こういう状況になった以上、もっともっと頑張りたいですよね。いっぱい曲を感じたままに作って、歌って、コロナ禍が落ち着いたら、全国ツアーも廻りたいです。地元でライヴもしたい。まずは、2021年1月31日に初めてのワンマンライブがあるので、しっかり届けたいです。プライベートでは……BBQとかしたいかな(笑)。

みんなもそうだろうけど、コロナ前ぐらい、自由に遊べる状況になればいいなぁって思ってます!

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プロフィール

瑛人

瑛人(えいと)

シンガー、ミュージシャン。1997年6月3日生まれ、神奈川県横浜市出身。三人兄弟の末っ子。高校を卒業後、横浜・大さん橋にあるアメリカン・ダイナー「PENNY'S DINER」でアルバイトをしながら、音楽学校に通う。2019年4月に『香水』EPをリリースし活動を本格的に開始。2020年1月に『HIPHOPは歌えない』『シンガーソングライターの彼女』をインディペンデントでリリース。同年春に『香水』がSNSなどで話題を呼び、一年越しの大ヒットとなる。2021年1月1日に1stアルバム『すっからかん』をリリース予定。無類のハンバーガー好き。

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作品情報

瑛人

瑛人 1stアルバム『すっからかん』

2021年1月1日発売

2020年、各配信サービスのランキングで軒並み1位を獲得、社会現象を巻き起こした1曲『香水』を生み出した瑛人の、自身初となるオリジナルフルアルバム。地元横浜で仲間とセッションを続けてきた“ピース野郎”が、すっからかんになるまで己の全てを注ぎ込んだファースト作品集。

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公演情報

瑛人初のワンマンライブ決定!
公演名:瑛人1stアルバム『すっからかん』発売記念ライブ〜トゥゲザーすっからかん〜
会場:duo MUSIC EXCHANGE
日時:2021/1/31(日) 開場16:00 開演17:00

チケット料金:前売り/全席指定 ¥3,000(税込/ドリンク代別)

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配信視聴チケットの詳細は後日発表

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