実力派俳優としての道を着実に歩む北村匠海さん。『とんかつDJアゲ太郎』『さくら』と映画の公開も控える一方、ダンスロックバンドDISH//のフロントマンでもあり、その活躍はまさに飛ぶ鳥を落とす勢い。とにかく多忙な彼にとって、大きな癒やしになっているのが“サウナ”。とてつもなく情熱的なサウナへの愛の持ち主です。
「宇宙に飛んでいく」「“整い欲”は三大欲求」など、独特のサイケデリックさがたまらない「北村語録」とともに、いざディープなサウナ・ワールドへ迷い込みましょう……!
撮影:友野雄(YU TOMONO)取材・文:東海林その子
記事制作:オリコンNewS
「一周目は10分、二周めは11分、三周目は12分」――整うための“マスト”ルーティン
――DISH//として『SAUNA SONG』をリリースしたくらいに、サウナを愛する北村さん。サウナに入る際、「これがあればさらに整う(リラックスした、気持ちのいい状態が訪れる)」「これは外せない!」ということは?
まず、サウナ前には絶対カレーを食べます。だいたいスパイス強めなインドカレーを食べます。そこで汗をかいて、なんならそれで一回整うくらいの気持ちです。あとは蓄積された疲労と欲望。疲れていれば疲れているほどいいんです。
“整いに行く”っていうマインドも超大事で、「気持ちで持っていく部分」があるんですよ。気持ちよくて何もかも忘れられるしスッキリするんだけど、心が追いついていないとたまに「あれ?」みたいなときがあるんです。
DISH//『SAUNA SONG』MUSIC VIDEO
サウナにあまり行かない人からしてみると、サウナに入る意味があんまりよくわからないみたいで、「何してるの?」って言われることが結構あります(笑)。でも僕は“整い欲”を三大欲求に入れていいと思っていて。もう癒やしって言葉の語源はこれか!っていうくらい、サウナに入って水風呂して外気浴しての1周目とか、とんでもない感じになります。なんかもう、全部いいやって(笑)。何もかも忘れられるし、脳に詰まっていたものがパーって消える感じっていうか。
――人間の三大欲求に……! そのルーティンを何周かするんですか?
僕は3周します。1周目はサウナが10分、水風呂は羽衣を着るまで、外気浴は乾くまで。2周目はサウナが11分、最後は12分に延びますね。
――3周。1分ずつ延ばすんですね。
サウナの中にある時計が12分時計なんですよ。整い終わるときに、その時計が1周しきったところで終わる気持ちよさがあるので、そう決めています。水風呂も正直温度にもよるんですけど、池袋の「かるまる」だと一番低い10度以下のと、14度くらい、その上の25度くらいで、整い方が全然違うんです。1周目は一番低いのに入ってキンキンに冷やして、2周目はちょっと休憩で25度、最後は14度。今のご時世、久しく入れていないですけど、いいですよね。
抽象的な言葉が多くなっちゃうんですけど、毎日の「はあ疲れた、寝よ」っていうポツポツと続く日々が、サウナに行くと全部線になる感覚なんですよ。毎日の点が、「おつかれー!」ってまっさらに繋がる感じ。
仲野太賀に連れられ“聖地”へ 10代で出会ったサウナ
――「点と線」……! それでは、サウナで整ったあとの定番はありますか?
本来はあまり良くないらしいのですが、ビールを飲みます。めっちゃくちゃうまいです。そこまでがセットですね。初めてサウナに行ったのが17歳か18歳のときで、(仲野)太賀くんに連れて行ってもらいました。そのときはサウナの後に炭酸飲料を飲んでいました。
だから成人して初めて「サウナ後のビール」ができたときは、これだよな〜ってやっと味わえた感覚でした。
――サウナの楽しみ方を教えてくれたのが太賀さんなんですね。
はじまりはそうですね。笹塚の「マルシンスパ」っていう、東京のサウナの聖地みたいなところに連れて行ってくれて。
――他にもサウナ仲間はいますか?
めちゃくちゃいます。磯村勇斗、伊藤健太郎もそうですし、上杉柊平、葉山奨之も。吉沢亮くんとも撮影で一緒だった時サウナ入りましたし。
――豪華! みなさん、楽しみ方は違うんですか?
違いますね。『サヨナラまでの30分』(2020年1月公開)って映画を撮っていたとき、そこで柊平くんにサウナを教えたんですよ。そしたらめちゃくちゃハマって、柊平くんと奨之と僕、あとカメラマンの方とみんなでサウナに行って。それぞれ足並みはバラバラなんですけど、最後の外気浴で横並びになるときに「僕らも繋がってるよな……」って。
――一体感が生まれるんですね(笑)。
「地球は一つだよな……」ってなるんですよ。サウナのあとって地球と繋がる感覚がある人もいるんですけど(笑)、僕は宇宙に飛んでいく感じがあるんです。僕は大体、空を見ながら外気浴をするんですよ。そうすると本当に気づけなかったことにいろいろ気づけて。「星ってこんなにキレイなんだ」とか、夏だと「トンボがめっちゃ飛んでる」とか。そういうちっちゃいことが幸せに繋がっていく感じがありますね。
リスペクトするのは磯村勇斗「ポテンシャルがすごく高い」
――そんな北村さんから見て、「こだわりがすごい!」と思う人は?
磯村くんはポテンシャルがすごく高いなと思います。さっきの欲望の話ですけど、整うためのポテンシャルってあるんですよね。彼がサウナの番組(『サウナーーーズ ~磯村勇斗とサウナを愛する男たち~』、WOWOWで放送)をやっていて、僕はそのナレーションを担当させて頂いたんですけど、その姿を見ていると「彼には敵わない……」と思ったんです。
『サウナーーーズ ~磯村勇斗とサウナを愛する男たち~』公式インスタより
2人でよもぎのスチームサウナに入ったときも、彼はとんでもなく熱波してきて(サウナ室でストーンに水をかけたり、タオルで仰いで水蒸気=熱波を作ること)。めっちゃストイックで、顔も体も真っ赤っかですよ。
そんな磯村くんが「池袋の『かるまる』に行ったことがないんだよね」と言うので、「じゃあ『かるまる』の“初めて”、僕が奪うわ」ってことで、2人でカレーを食べてから行きました。中にあるサウナ室と水風呂を全部回りましたね。最後が薪サウナだったんですけど、僕、そこが一番好きで。本物の火があるし、サウナ室の中にドライフラワーが飾られていて、かなりネイチャーなんです(笑)。木の匂いに包まれて汗をかいて、自然に帰った気持ちになれます。
――すごい。薪サウナでは、自然も体感できるんですね。
柊平くんとはずっとテントサウナをやろうって言っているんです。キャンプに行ってテントを張って、サウナして川に飛び込む。そのまま川辺で空を見上げようって。いろいろなことが落ち着いたら、自然に触れながらサウナを楽しみたいです。
(サウナの本場)フィンランドにも行きたい。あと、長野では「サウナフェスジャパン」というフェスがあるんですけど、前に磯村くんがゲストで出ていて、僕はMCとして出たいんです。
――テントサウナにフィンランドにフェスまで、野望は尽きないですね。では最後に、北村さんにとってサウナとは?
僕にとってサウナとは、命の流れを感じられる場所。「生きている心地」がある場所です。
――壮大です……。
そうですね(笑)。サウナに行くと生きている心地があるし、血が流れている感覚もあって。すごい変な話をしていますけど(笑)、そういう場所です。
主演作『とんかつDJアゲ太郎』では、「音楽業界を活気づけられたら」
――サウナへの情熱、たっぷり伝わってきました。そして10月30日からは北村さんの主演映画『とんかつDJアゲ太郎』が公開されます。DISH//として音楽活動もされている北村さんですが、DJ役にチャレンジして感じたことは?
楽曲って、我々から発信されるメッセージは自分たちの音楽・自分たちの言葉なんですけど、DJはある種、楽曲を紹介する仕事。だから、その中でフロアの人たちを見極めないといけない、意外とストイックな職業だと思います。アゲ太郎も、ひとりよがりになってフロアを理解できていなくて総スカンになっちゃったりすることもある。DJはいろんな感覚が必要な職業だなって思います。
――作中ではさまざまな楽曲が使われていますが、その選曲はどんなふうに感じましたか?
アゲ太郎をやる上での選曲はずっと気になっていました。僕自身が出会う音楽はハウスやアシッドとかで……この話をすると深々としたところにいっちゃうんですけど(笑)。でも映画にすると、当たり前ですけど僕基準だけではなくたくさんの人に届けなきゃいけないし、なじみのある曲にしなきゃいけない。だから、この映画の中での音楽はクラブミュージックじゃない曲も、レコードで売られていない曲もあるけど、きっと今の世代には刺さるものがあると思うんです。
だからこの映画を観て、僕よりちょっと下の世代の方が、たとえば昔のクラシックなヒップホップなんかを知ってくれたら、すごくうれしいなって思います。音楽業界を活気づけられたらという考えもありますし、映画を通してしっかり伝えていかなくてはいけない。僕がDJプレイをするシーンではそんなことを考えていました。
――なるほど。北村さんは以前にもDJ経験があったとのことですが、そんな北村さんにとって、キメの1曲は?
僕、ヴァイナル(アナログレコード)はテクノとハウスしか持っていないんですけど、それを好きになったきっかけがフォー・テット(Four Tet)っていうアーティストで。彼が「KH」名義で作った『ONLY HUMAN』っていう曲があるんですけど、それは……ヤバいっすね。めっちゃカッコいい(笑)。ぜひ聴いてみてください。
KH aka Four Tet『Only Human』
――コアですね(笑)。今回の映画は流れる楽曲だけでなく、効果音などの“音”もカッコいいなと思ったのですが、北村さん的に「ここの音はやばい!」と思うシーンをあげるなら?
とんかつを揚げている音もそうなんですけど、序盤のシーンで、キャベツを切っているときに包丁がまな板に落ちる音も好きですね。音フェチにはたまらないだろうなと思います。映画館って、もちろん大きなスクリーンで観られることもそうですけど、自宅だったら聞けない音質の良さやボリュームで「音」をめちゃくちゃ楽しめる空間。なので、この作品では「音楽」も「音」も、両方楽しんでもらえるんじゃないかなと思います。
――共演したみなさんは同年代の方が多いですね。撮影中のエピソードも教えてください。
(伊藤)健太郎は『仰げば尊し』(2016年、TBS系ドラマ)から共演はなかったですけど、プライベートでは心許せる親友だったので、今回ライバル役で隣にいてくれたのはすごく心強かったです。同世代の健太郎と(山本)舞香氏の2人には助けられていましたね。一緒に戦っている感じではありました。
あとは3代目のみんな(加藤諒、栗原類、前原滉、浅香航大。アゲ太郎の幼なじみのメンバーで、書店・旅館などの「3代目」で構成されている)と、ふざけて他愛もないことで笑っているみたいな時間が多かったです。加藤諒くんはカメラを向ければ何かをやってくれて、僕の心の癒やしでした。
――終盤の伊藤さんとのDJシーンが印象的ですが、あのチームワークは自然に生まれたものなのでしょうか?
自然とでしたね。めっちゃ楽しかったです。芝居をしていて健太郎が横にいるのが久々すぎて不思議だったんですけど、「お互いに少し成長できたかな~」って感じながら、ステージの上で音楽やっているっていうのがすごいエモくて。役柄と自分たちが完全にリンクしていたかもしれないです。2人でずっと話していました、「あそこのシーンはやばいね」って(笑)。
――ちなみに……北村さんは揚げ物は好きですか?
大好きです。特に好きなのは唐揚げです。うちの母もよく揚げ物を出してくれて、サツマイモの天ぷらが好きでした。
――揚げ物を食べすぎて太ってしまう、なんてこともあります?
今まではあまり太ったことのない人生だったんですけど、この撮影のときはめちゃくちゃ太っていたんですよ。でも、「ちょっとおなかがかわいいな?」くらいで、自分では太っていると思っていなくて(笑)。いざ完成した映画を観たときに……舞香にも言われたんですけど、めっちゃムチムチで(笑)。
撮影中にとんかつもめちゃめちゃ出してもらって、「とんかつ屋の息子だし!」って思ってかなり自由に食べていたので、(映画では)顔がまんまるなんです。だから逆に隠さないでさらけ出していこうと思って、毎回取材で話しています。本当にわがままボディなので(笑)。
プロフィール
北村匠海(きたむら・たくみ)
アーティスト・俳優。1997年11月3日生まれ、東京都出身。B型。ダンスロックバンド・DISH//のメンバーで、ギターとボーカルを担当。俳優としても、NHK大河ドラマ『平清盛』や、TBS系ドラマ『仰げば尊し』、映画『あやしい彼女』、『恋と嘘』などに出演。2017年、映画『君の膵臓をたべたい』で主演。2020年は『サヨナラまでの30分』『思い、思われ、ふり、ふられ』『とんかつDJアゲ太郎』『さくら』など多数の映画で主演を務めている。
作品情報
『とんかつDJアゲ太郎』(10月30日公開、配給:ワーナー・ブラザース映画)
とんかつ屋3代目の跡取り息子・アゲ太郎。とんかつもフロアもアゲられる「とんかつDJ」を目指す! すべては一目惚れした苑子ちゃんを射止めるために――。
でも、豚肉にもDJ機材にも触ったことがないアゲ太郎。
いい加減な性格のDJオイリーに弟子入りしたり、大人気DJ・屋敷を勝手にライバル視しちゃったり、ノーテンキなアゲ太郎の道のりは、一に勢い、二に勢い、三に運命の出会い!?と大ハプニングだらけ!
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この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。
