日本を代表するロックミュージシャンの一人である矢沢永吉さん。そして、矢沢さんの大ファンを公言し、リスペクトしてやまないのが、俳優の竜星涼さんです。竜星さんにとって、矢沢さんの半生をつづった自伝『成りあがり』(角川文庫)が“バイブル”で、デビュー当時はその影響で「とがっていた」部分があったそう。
そんな竜星さんに改めて“YAZAWA”との出合いからリスペクトするに至った経緯、さまざまな視点での好きな曲などを聞きました。あふれ出る“YAZAWA熱”をこれでもかと発していただきます!
撮影:田中達晃(Pash) 取材・文:遠藤政樹
記事制作:オリコンNewS
母親の影響で自然に親しんでいた、矢沢永吉の楽曲
――竜星さんは1993年生まれの27歳です。矢沢永吉さんが組んでいたバンド「CAROL(キャロル)」(1972年デビュー)や矢沢さんのソロ活動(1975年~)などは、いわゆる“世代の音楽”とは少し離れていますが、お母さまの影響で矢沢さんの楽曲を聴き始めたとうかがいました。
そうですね。小さい頃からいつの間にかYAZAWAの曲が周りで流れていました。“世代の曲”も聴いていましたが、母親の影響なのか、世代以外でも知っている曲が結構あります。特に矢沢さんは母親も好きだったのでよく聴いていましたね。
――家で幅広い世代の音楽が流れているのは素敵ですね。竜星さん自身が矢沢さんの魅力に「心底やられた」と感じたのはいつ頃でしょうか?
歌はずっと聴いていたので、「この曲いいな」とかは感じていたのですが、人として尊敬したりリスペクトしたりするようになり、本当の意味で好きになったのは高校生くらいです。
その頃、矢沢さんの『成りあがり』という本を母親に渡されて……まあ投げつけられたという方がしっくりくるんですけど(笑)。その本を読み、矢沢さんの生き方に対して共感したり、憧れたりするようになりました。そこから僕も母親と一緒に矢沢さんのライブに行くようになり、現在に至っています。
――そういう経緯だったのですね。ところで、「本を投げつけられた」というのは、どういう状況だったのでしょうか?
当時は、そこまで勉強もしていなくてフラフラしていました。そういうときに、おそらく「活を入れる」という意味で、母親から本を渡されたんです。まだ学生だったこともあり、「自分は将来どういう職業に就いてどうなるのかな」と漠然と考えていて、どうしようかというときにこれを読みました。
――お母さまからのYAZAWAの言葉を借りた“愛のムチ”だったのですね。読んでみた印象や感じたことは覚えていますか?
恥ずかしい話、それまでは小説などをちゃんと読んだことがなくて、初めてああいう自伝本を渡されたときは、それを読むことすら苦痛だなと思いました。だけど、読み始めるともうスラスラ読めて。自分がYAZAWAになった気持ちで読めました(笑)。
読んでいると太陽のような熱さ、熱量みたいなものを感じて、自分も“スター”になれるものを見つけなきゃいけないと思い、実はそのタイミングでこの世界にスカウトされました。そんなこともあって、すべてがいいタイミングでつながってくれた感じです。矢沢さんの話をしようとして、なんか僕のヒストリーみたいになっていますけど(笑)。
若気の至りと反省も、デビュー当時は“とがり”発揮
――芸能界入りに多大な影響を与えた『成りあがり』ですが、デビュー間もないころは、そのカッコよさや内容を曲解してしまい、“ムダにとがっていた時期がある”とうかがいました。実際どのような雰囲気だったのでしょうか。
デビュー当時、現場に行くときは基本的に「俺は戦いに来ている」という気持ちが強かったので、例えば同世代の役者さんやその他の共演者に対して、「俺は遊びに来ているんじゃない!」みたいに勝手にとがっていた部分はありましたね。今から思えば自分の勝手な思い込みだったと思います。
――バリバリに気合いが入った状態ですね。では、その時期に「これは本当に失敗だったな」と印象に残っていることあれば教えてください。
例えば夏場とかに先輩からアイスの差し入れがあったとして、「どうぞ食べてください」と言われたら素直に食べればいいのに、「俺は別に、現場にアイスを食べに来てきているんじゃないので、大丈夫です」とあえて断っていたことでしょうか(笑)。ちょっと違ったとがり方をしちゃっていましたね。
――今の竜星さんからはまったく想像できませんが、そんな時期があったとは。周囲の人からすると「うわ~……」となってしまいそうですね。
もし僕がいま年下の子たちがいる現場で、自分がそうやって差し入れをしたときにそんなこと言われたら、「食べてよ!」と思いますけどね(笑)。だから当時はすごく失礼なことをしていたんだなと思います。
――いわゆる“若気の至り”かもしれません。どこで違和感に気づいたのでしょうか。
「違うな」と気づいたというよりは、「協調性もやはり大事なんだな」と思うようになりました。お芝居、俳優という職業では、もちろん個を大事にすることはすごく大事なことだけど、それだけでは俳優という仕事は成立しない。チームプレーみたいなところもある。だから、そういう態度を続けるのは難しいと気づきました。
今でもまだ若い方ですけど、もっと若い頃は、「まだ自分は何者でもない、何かになりたい」と思い、とにかくがむしゃらに「何か」、見てすぐわかるようなものになりたかったのでしょうね。それで変に突っ張っていたのかなと思います。
そういう考え方をハングリー精神と捉えるのであれば、今でもそれは忘れたくない気持ちではあります。でも当時よりはだいぶ柔らかくなってきていると、自分では思っています(笑)。
YAZAWAフリーク・竜星涼が選ぶ、こんなときに聴きたい6曲
――矢沢永吉さんといえば楽曲はもちろんのこと、しびれるような圧巻のライブパフォーマンスも魅力のひとつです。矢沢さんのライブにもよく参戦されているそうですが、どのようなところに魅力を感じていますか?
会場との一体感、です。客席には矢沢さんと同じような出で立ちをした“YAZAWA2世”の人たちがいっぱいいて、そこで一緒に「永ちゃんコール」をしながら、矢沢さんのパワーに対して「俺らも負けないぜ!」みたいなノリが印象的ですね。
ライブの定番曲の一つ『止まらないHa~Ha』はタオルを投げ合ったりしてものすごく盛り上がります。あの一体感すべてが、矢沢さんのパフォーマンス、ライブの良さだと思うし、気づけば隣同士は仲間みたいな、そういう感じがありますね。
この投稿をInstagramで見る
――会場に集まったファンとのコール&レスポンスや盛り上がりすらパフォーマンスの一環に感じられるというのは、本当にすごいですね! 聞いているだけで行ってみたくなりました。会場には矢沢さん風な人たちがいるとのことですが、竜星さんがライブに行く際は、どのように“YAZAWA感”を出していっていますか?
矢沢さんのライブに行くときは毎回白のセットアップに矢沢さんの星(矢沢さんのトレードマーク)の黒Tシャツにサングラスで決めて、タオルを持って行くというのが僕の“お決まり”ですね。
この投稿をInstagramで見る
ドルチェ&ガッバーナのセットアップを身に着けライブに参戦した竜星さん
――戦闘態勢ばっちりでライブ参戦されるのですね。
行きますねぇ。去年のライブも行きましたけど、そのときのために白のセットアップを新調しようかなと思い、YAZAWAのためにドルチェ&ガッバーナの白のセットアップを買っちゃいました。ファッション的にもちゃんとオシャレをしながらライブも楽しむという。それぐらいライブに行くときは気合い入っていますね。
――ライブのために洋服まで新調するとは、YAZAWA愛が炸裂していますね。では、そんな竜星さんに「こんなときのYAZAWAの1曲は?」を聞いてみたいと思います。まずはライブで演奏される曲で一番好きなのは?
難しいなあ……。ライブはツアーごとに毎回セットリストが違うから、自分の好きな曲がきたときは余計にうれしいです。やっぱりものすごく王道だけど、ライブで好きな曲としては、『止まらないHa~Ha』は外せないかな。『Ha~Ha』を最後に聴いて、会場一体となった『Ha~Ha』で終わる。その曲がないと終われないよねっていう感じですね。ただたまに『止まらないHa~Ha』とかをセットリストの2曲目ぐらいに入れてきて、こっちとしては「えっ、もう!?」みたいなことも(笑)。
矢沢永吉さんライブの模様 最後には『止まらないHa~Ha』も
――『止まらないHa~Ha』はホーンセクションのイントロと力強いサビが印象的で、まさにライブ映えする楽曲です。コール&レスポンスしたりタオルを投げ上げたり、矢沢さんとファンが作り上げてきた曲とも言えますよね。続いて、カラオケで必ず歌う1曲は?
それは矢沢さんを知っている世代、知らない世代のどちらとカラオケに行くかでも変わってくるので難しいですね。それでも王道でいくなら『止まらないHa~Ha』や『ファンキー・モンキー・ベイビー』とかはだいたいみんな知っているので、このあたりを歌うとみんな盛り上がってくれるし、自分はある程度完コピで振り付けを踊りながら歌える。マストで押さえている曲ではありますね。
――一緒にカラオケに行く相手に合わせて選曲とは、気づかい上手ですね。『ファンキー・モンキー・ベイビー』はCAROL時代の曲ですが、ノリノリなロックンロールの曲調で、確かにみんなで盛り上がるのには最高です。
はい。そういうのは関係なく「好きな歌を歌おう!」という人と一緒のときは、バラードを結構歌いますね。『チャイナタウン』がすごく好きでよく歌います。
この投稿をInstagramで見る
『MEN’S CLUB』2020年1月号 「偏愛自慢」特集に出演した竜星さん
――『チャイナタウン』はアルバム『ドアを開けろ』(1977年発売の3rdアルバム)の収録曲で、大ヒット曲『時間よ止まれ』のカップリングにもなった「隠れた名曲」と言われています。矢沢さんのボーカルとアジアンテイストのアレンジが絶妙ですが、竜星さんの声も曲にマッチしそうですね。
あとは『いつの日か』も好きで、自分で歌いながら自分に酔うみたいな(笑)。あの瞬間がたまらなく最高ですね。
――わかります! 曲がドラマティックな展開で、歌詞も渋みを感じさせる内容なので、目をつぶって酔いしれて歌いたくなりますね。ところで振りもつけて歌うとのことでしたが、歌い方も矢沢さんに寄せて歌いますか?
そうですね。合いの手を入れたり、(矢沢さんの決めゼリフを言うときも)普通に「ロックンロールに……」ではなく(矢沢さんのマネで)「ルォックンロールに感謝しようぜ~♪」って言ったりしています。
それと矢沢さんがライブで客席に呼びかけるときの(再び矢沢さんのマネで)「うめぇビール飲んで帰ろうぜ~!」とかもやっていますね。僕あんまりビールは飲めないんですけど(笑)、でも矢沢さんがCM出演されているなら飲んでみようみたいな、そういう感じです。
この投稿をInstagramで見る
『MEN’S CLUB』2020年1月号 「偏愛自慢」特集の撮影風景
――とても楽しそうですね。では落ち込んだときに励まされる曲はありますか?
基本的には僕、落ち込まないんですよ。だけど「疲れたな」とか「ちょっとテンション上がらないな」というときは、やっぱり『ファンキー・モンキー・ベイビー』かな。あの「ドゥルドゥルタンタータンタンタラター♪」というイントロが流れると、「よっしゃ、やるしかない」「ノってくるぜ」という気持ちになりますね。
――矢沢さんの楽曲はどれも曲調でグッとくるものが多いですが、歌詞が特に刺さる曲はありますか?
もちろん、いっぱいあります。昔、矢沢さんがライブで感極まってちょっと歌えなくなったことがあるという『アイ・ラヴ・ユー,OK』は、「長くつらい道も」をはじめ歌詞がグッときます。
――確かにソロデビュー曲である『アイ・ラヴ・ユー,OK』ですが、実は矢沢さんが10代の頃に作ったにもかかわらず、なかなか発表できなかった曲と言われていますからね。
「お前に分(わか)るかい」という歌詞がある『トラベリン・バス』もすごく好き。やっぱりハングリーな曲は、僕自身もハングリー精神があるので、同じことを経験するわけじゃないですけど共感しますね。
矢沢永吉はスーパースター。会いたいけど会いたくないという複雑な心境
――ここまで竜星さんの“YAZAWA熱”に触れてきましたが、「YAZAWA初心者にまず聴いてほしい1曲」を選ぶとしたら、どの曲を紹介しますか?
意外と『いつか、その日が来る日まで…』(2019年に発売された同名のアルバムの表題曲)ですかね。何かこう、すごく“今の永ちゃん”を歌っている気がします。聴く側として「いつまでもやってほしい」という気持ちはありつつも現実があるなかで、去年リリースされたアルバムのこの曲は、何か染み入るものがあります。
初めて聴く人にとっても新しいサウンドであり、矢沢永吉さんの人生を振り返っているような歌。昔の若くてハングリーで、髪型もポマードで決めた“カッコよくてスタイリッシュな矢沢永吉”とはまた違う、どこか哀愁漂う、ある種の貫禄が感じられます。そういう人が『いつか、その日が来る日まで…』を歌うと、じわーっと来るものが。逆にそこから「この人ってどういう人生を歩んできたのだろう?」って、きっとみんな知りたくなるのではと思います。
――長年、矢沢永吉ファンを続けてきた竜星さんならではの分析と選曲ですね。現在から伝説を紐解いていくという聴き方も素敵だと思います。そんな竜星さんもまだご本人にはお会いしたことがないそうですが、もし会えたらどんなことを伝えたいですか?
あ~!(煩悶して)……尊敬している人なので、会いたいというか、なんというか……という感じと、単純に一ファンとして、自分が成り上がらなきゃと思わせてくれた『成りあがり』の本にサインがほしいという気持ちがありますね。
会いたい気持ちと会いたくない気持ちが半々である感じですね。でもやっぱり会いたいかな(笑)。緊張して何もしゃべれないと思います。ただ「大好きです」って握手してもらいたいです(笑)。
――竜星さんのようにさまざまなジャンルで活躍されている方でも、やっぱり憧れの人に会えると思うと緊張するものなのですね。では最後に、竜星さんにとって「矢沢永吉とは」?
一言で言うならば、矢沢さんは僕にとって「スター」です。僕にとってのスーパースター、それが矢沢永吉です。
スペシャル動画
プロフィール
竜星涼
1993年3月24日生まれ。東京都出身。2010年にドラマ『素直になれなくて』で俳優デビュー。2013年2月放送開始のスーパー戦隊シリーズ『獣電戦隊キョウリュウジャー』で桐生ダイゴ/キョウリュウレッド役でドラマ初主演を果たした。2016年にはパリコレデビューを飾るなど、モデルとしても活躍している。
作品情報
映画『ぐらんぶる』
公式サイト 8月7日(金)全国ロードショー
キャスト:竜星涼、犬飼貴丈、与田祐希、朝比奈彩、小倉優香、石川恋/高嶋政宏
監督:英勉
原作:井上堅二・漫画:吉岡公威『ぐらんぶる』(講談社アフタヌーンKC刊)
(C)井上堅二・吉岡公威/講談社 (C)2020映画「ぐらんぶる」製作委員会
青い海、聞こえてくる潮騒、照り付ける陽射し――国内でも珍しい離島にある大学に入った伊織の目標はただひとつ。それは気のあう友人や可愛い女子と<キラキラな大学生活>を送ること。なのに――「何かおかしい」最初に異変を感じたのはオリエンテーションの朝。伊織はなぜか服も記憶もなく大学の講堂の前で目覚めてしまう。やがて同じ境遇に陥った無駄にイケメンなアニメオタク・耕平と出会い、共にある場所にたどり着く。そこは常識が通用しない“無法地帯”、超ぶっ飛んだダイビングサークルだった! 狂暴なクーデレいとこ、どシスコンのお姉さま、エロい先輩、はたまた激ケバギャルも!? 神様、僕たちに普通の大学生活を送らせてください―――ヤバすぎるメンバーに囲まれた、伊織と耕平の運命はいかに!?
■関連記事■