島崎信長“TYPE-MOON”への道案内 FGOを作ったメーカーと、衝撃のヒロイン“琥珀”の抗えない魅力

島崎信長

数多くのアニメやゲームで活躍する声優の島崎信長さん。2021年5月15日に公開される劇場版アニメ『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』の『後編 Paladin; Agateram』に、前編から引き続き、藤丸立香(ふじまる・りつか)役で出演しています。アニメやゲーム好きとして知られる島崎さんは、この『Fate』シリーズなどを手がけるゲームブランド「TYPE-MOON」の大ファンとしても有名です。今回は島崎さんに、「TYPE-MOON」作品の思い出とともに、深い愛情を語っていただきました。

※島崎信長さんの「崎」は“たつさき”が正式表記です
※物語の内容に触れる描写がありますのでご注意ください

撮影:平野敬久 取材・文:遠藤政樹
記事制作:オリコンNewS

TYPE-MOON(タイプムーン)とは?

有限会社ノーツのゲームブランド。もともとは同人ソフトサークルとして、PCゲーム『月姫』を製作するために1999年に結成された。設立メンバーは、武内崇氏、奈須きのこ氏、清兵衛氏、KATE氏。『月姫』はゲームファンの間で非常な話題作となり、『Fate/stay night』の製作をきっかけにTYPE-MOONは商業化。代表作となるシリーズに、『月姫』『MELTY BLOOD』『Fate』など。それぞれのシリーズでも世界観を共有しており、その精巧さで多くの熱狂的ファンを獲得している。

2015年にスマホゲーム『Fate/Grand Order』がリリースされ、全世界の累計ダウンロード数が5900万を突破する人気ゲームとなる。2020年12月に劇場アニメーション『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編 Wandering; Agateram』が公開、今年5月15日から『後編 Paladin; Agateram』が公開される。

そもそもゲームへの入り口は? 『クロノ・トリガー』に熱中した子ども時代

島崎信長

――「TYPE-MOON」好きとして知られる島崎さんですが、ゲームはいつごろからプレイするようになったのでしょうか。

父がかなりのゲーム好きで、家にたくさんファミコン(ファミリーコンピュータ)のカセットがあったのを覚えているので、幼稚園ぐらいのころからゲームで遊んでいましたね。

特にスーファミ(スーパーファミコン)の『クロノ・トリガー』(スクウェア、現スクウェア・エニックス、1995年)は一番やりました。キャラクターの能力は星(※最大値)にしましたし、なかでもエイラというキャラクターの装備(「こぶし」)が、レベルを上げて「剛拳」になったときは「強っ!」と思っていました。         

『クロノ・トリガー』より『時の回廊』

――一つ手前の「鉄拳」でも相当強いですが、「剛拳」は驚異的な攻撃力になる代わりにレベル上げが大変です。やりこみ要素はお好きなほうですか?

そうですね。ただそういう意味では『クロノ・トリガー』の「強くてニューゲーム」(※主にRPGで、2周目以降に、1周目クリア時のステータスなどを引き継いで遊ぶことができるシステム)は、最初からもう一度ではなく積み重ねの結果から周回できるのが嬉しかったのをよく覚えています。他にも、『テイルズ オブ』シリーズのリオン・マグナスというキャラクターが大好きで、『テイルズ オブ デスティニー2』(ナムコ、現バンダイナムコゲームス、2002年発売のPlayStation 2用RPG)では、2周目以降のプレイに解禁要素があるのですが、そのために何周もしました。クリアして解放されていくという要素は結構好きかもしれません。

ほかにも『魔界戦記ディスガイア』(日本一ソフトウェア)のようなやり込みゲームも好きだし、『三國志』(コーエー、現コーエーテクモゲームス)とか『シヴィライゼーション』(マイクロプローズ)も、時間がめちゃくちゃ持っていかれますけど好きですね。

『魔界戦記ディスガイア6』プロモーションムービー

『三國志』30周年記念ムービー

――RPGタイトルの名前が多く挙がりましたが、特に好きなジャンルはありますか。

どちらかというとアクション系や FPS(シューティングゲームの一種)よりコツコツやれるタイプのゲーム、ストラテジーやシミュレーション、RPGが好きです。育成系、ゲームシステムや数値とにらめっこして育成理論などを立てるのが好きなのかもしれません。

何が一番好きかと言ったら、やっぱりRPGになるのかな。でもゲームセンターで最初に稼働した『THE IDOLM@STER(アイドルマスター)』(ナムコ、現バンダイナムコゲームス)や、『機動戦士ガンダム ガンダムVS.ガンダム』(バンプレスト)とか、当時ゲームセンターではやっていたゲームは一通り触りましたね。

TYPE-MOONの世界観やワードセンスのとりこに

島崎信長

――そうやってゲームに慣れ親しんでいくなか、高校生の時にゲームセンターで『MELTY BLOOD Act Cadenza』(メルティブラッド アクトカデンツァ、2005年から稼働。以後「メルブラ」)をプレイして「TYPE-MOON」作品に興味を持たれたそうですが、どのような要素がアンテナに引っかかったのでしょうか。

MELTY BLOOD(メルティブラッド)

TYPE-MOONが手掛ける伝奇ビジュアルノベル『月姫』の世界観で描かれる2D対戦格闘ゲームシリーズ。2002年のPC版リリース以降、アーケード版などさまざまなプラットフォームで展開している。

当時ゲームセンターにあっためぼしいゲームは大体遊んでいたのですが、なかでも『メルブラ』のキャラクター性や世界観、いわゆる中二(病)っぽい要素が刺さり、七夜志貴(ななや・しき)のセリフもいちいち全部カッコよくて好きになりました。

それで家でコンボの練習をするために PC 版の『MELTY BLOOD Re・ACT』(メルティブラッド リ・アクト)を買ったところ、一般的な格ゲーのストーリーとは違い、ルートが何個もあるようなとんでもない量のストーリーモードが搭載されていて。「遠野家地下王国」の話とか「G秋葉」とか隠しシナリオまでプレイして、言葉の端々から受け取れる設定や「直死の魔眼」みたいなワードや能力にもハマったし、話が本当に面白かった。デザインも良くて、そこからTYPE-MOONにどんどんハマっていきました。

『MELTY BLOOD: TYPE LUMINA』ティザー映像

――作品ごとに異なる部分もあるかと思いますが、ほかのゲーム会社にはない「TYPE-MOONならではの魅力」をどのあたりに感じられていますか?

設定というか世界が“生きている”ところ。今も生まれたり成長したり変わったりし続けている部分や、公式の遊び心、ライブ感ですね。TYPE-MOON作品の設定は固まりすぎておらずファジーな部分もあり、時代に合わせて変化もしていて、たとえば「死徒二十七祖」(人類の敵となる存在)もちょっと設定が変わっています。設定はビシッとして変わらないのが好きという人もいて好みは分かれると思いますが、僕は“生きもの感”というか、リアルタイムで作っていっている感覚に魅力を感じています。

自分が(コンテンツを)作らせてもらう側で関わっているので余計に共感できる部分もあるのかもしれませんが、長く関わっていればいるほど変化も楽しめるし、知っているからこそ「こう変わったのか」「変わったのはこのためか」といった楽しみ方はある気がしますね。

設定が膨大で緻密で長く続く作品を作りながら、今も変わり続けていることは、なかなかできることじゃないと思います。普通は続けば続くほど守りに入ったり頑なになったり……となることも多いのでしょうが、ずっと柔軟なんです。良い意味で、同人時代からのクリエイティブや遊び心を忘れていない印象が強いですね。

島崎信長

――時代に合わせて変化していくリアルタイム感も楽しさの一つということですが、先ほどのお話の通り、TYPE-MOON作品は設定が膨大です。今でこそ検索すれば簡単に情報にたどり着けますが、当時は調べるのが大変だったのではないでしょうか?

今ほど Wikipedia が充実していなくても考察サイトがたくさんありましたし、あと当時TYPE-MOON作品の二次創作サイトもめちゃくちゃ見ていたので、そこまで困ったというのはないかもしれません。たまに公式の設定か二次創作で読んだ設定のどっちだったろうか……と混乱することはありましたね(笑)。

あとTYPE-MOONは設定資料集も多く、例えば『月姫』だったら「青本」(※設定や資料を集めたガイドブック『月姫読本』の通称)を読めば一通りわかりますからね。そういったもので作品のつながりなどは把握していました。

――そういった部分も「TYPE-MOONならでは」と言えるかもしれません。ほかのゲームも含め、島崎さんは完全自力での攻略派、それとも攻略サイトなどを活用するタイプですか?

場合によるかな。自分でオリジナルの攻略法を考えて楽しみたい部分と、攻略サイトなどを見て最適解を出す部分、ハイブリッドタイプですね。

不動の絶対的ヒロイン“琥珀”の魅力 

島崎信長

――以前、TYPE-MOON作品のなかで一番好きなヒロインとして「琥珀」(こはく/『月姫』など)を挙げていらっしゃいましたが、その後変わったり新しく気になっているキャラクターがいれば教えてください。

僕は徹頭徹尾、琥珀さん! ほかにもいろいろ好きなキャラクターはいますけど、ナンバーワンの位置にはずっと琥珀(こはく)さんがいます。         

『TYPE-MOON TIMES Vol.1』より『月姫 -A piece of blue glass moon-』PV

月姫

2000年にTYPE-MOONが同人ゲームとして発表したPC用ビジュアルノベルゲーム。作りこまれた世界観や圧倒的なボリュームで人気を博す。「直死の魔眼」特殊能力を持つ高校生の遠野志貴(とおの・しき)を主人公に、不可解な猟奇殺人をめぐって様々な謎が展開していく。琥珀は遠野家の使用人で、双子の妹・翡翠(ひすい)とともに仕えている。遠野家にかかわる者として、物語の中で重要な役割を担っている。遠野家の能力とかかわる力を持ち、そのせいで複雑な事情を抱えている。『MELTY BLOOD』シリーズにも登場している。

――不動の一位は変わらず、ということですね。では改めて理由を聞かせてください。

一言で言うなら「衝撃的」でした。『メルブラ』の時の印象だと「かわいらしくて、ちょっとはっちゃけた朗らかお姉さん」という感じで、僕自身ああいうちょっと天然ぽい、元気っぽいお姉さんタイプが大好きなのもあります。

ただ実際に『月姫』をプレイすると、琥珀さんはそんなに元気じゃなく、儚くきれいなお姉さんという雰囲気なんです。もちろん同じ人物なのでまったく違うというわけではないのですが、空気感が違うというのでしょうか。シナリオ自体『メルブラ』の方がポップなのもあって、『月姫』をプレイしていくといろいろ衝撃的でした。琥珀さんが抱えている事情がとにかく激重で、そこまで難儀だったからこそ、逆にとっても印象的だったというのはあるかもしれません。琥珀さんによって色々なキャラに対する許容範囲も広がった気がします。

島崎信長

――どのように広がったのでしょうか?

僕は「公式と解釈違い」みたいなのはあまりなくて、公式がそう言っているのならいいと思うほうです。逆に言えば、自分のなかにあるものでも、それが公式である必要はなくて分けて考えればいいと思っているので、「受け入れられない」と思うことがあまりありません。そういった捉え方は、間違いなく琥珀さんで間口が広がったと思いますね。

琥珀さんに出会って、「琥珀さんが好き」「琥珀さんの全要素を理解して好き」という経験がなかったら、もうちょっと僕のオタクとしての許容量や間口は狭かったのかも。

島崎信長

――そんな琥珀さんは殿堂入りだと思いますが、もし、どうしても“推し変”をしないといけないとなったら、どのキャラクターでしょうか。

琥珀さん以外ですか。う~ん……誰だろうな(苦笑)。(間桐)桜(まとう・さくら/『Fate/stay night』など)とかも好きですけど「琥珀さんがいたから」という流れがありますからね。TYPE-MOONのキャラはみんな好きだけど、琥珀さんの流れを汲むようなキャラを特に拾っていますので。

例えば男性キャラも、志貴や、『Fate』シリーズならギルガメッシュも好きですが、他の人を考えても結局「それって琥珀さんがいたから」となってしまうんですよね(笑)。自分のベースに琥珀さんがいなかった場合、桜を受け入れられるかどうかの話にもなってもきます。

いやあ……やっぱり考えられないですね(笑)。ほかのキャラのことを考えても根底に琥珀さんがいて、だからこのキャラを好きになったという部分が少なからずあります(笑)。そういう意味では近いラインである「玉藻の前」(たまものまえ/『Fate/EXTRA』など)も好きです。

劇場版『Fate/stay night[Heaven's Feel]』第一章

――やはり島崎さんにとって、琥珀さんの影響は絶大なのですね。

だって『月姫』琥珀、『Fate』桜、『EXTRA』玉藻みたいに好きなキャラクターを挙げていくと、周りから「本当わかりやすいよね」って言われますから(笑)。

TYPE-MOON初心者に味わってほしい! ビジュアルノベルゲームの面白さ

島崎信長

――ここまでTYPE-MOONの魅力を語っていただきましたが、例えば『Fate』シリーズと言ってもゲームやテレビアニメ、劇場版アニメなど、数多くの作品があります。初心者の方は“入り口”に悩んでしまいそうですが、TYPE-MOON好きの“先輩”として何かアドバイスをお願いします。

正直、人それぞれってなっちゃうんですよ(笑)。強いて言うなら、ちょっと敷居は高くなるかもですが、やっぱり原作ゲーム『Fate/stay night』をやったらいいのではとは思います。ビジュアルノベルゲームをしっかりやったことない人だと、文章量の面で少し大変だと感じるかもしれません。ただ、『Fate』も『月姫』もそうですが、やっぱりビジュアルノベルから入ってほしいという思いはあります。もちろん『Fate/EXTRA』みたいな RPGもおすすめですが、僕的にはやっぱりTYPE-MOONといえば、まずはビジュアルノベルとして楽しんでもらえたらうれしいです。『まほよ』(※)も良い。すごく良い。

※『魔法使いの夜』の略称。奈須きのこによる同名の未発表の小説が『月姫』『Fate/stay night』『空の境界』の原点と言われている。2012年に伝奇ビジュアルノベルゲームとして発売された。

Fate/stay night

2004年に発売されたPC用ビジュアルノベルゲーム。その後、アニメ化、家庭用ゲーム機やスマートフォン用ゲームへの移植など、多くのメディアで展開されている。

島崎信長

――ビジュアルノベル以外ではどうでしょうか。

そうですね。やったことない人にいきなりビジュアルノベルを薦めるのは酷なのもわからなくはありませんので、そうしたらアニメや他のゲームになるのかな。

たとえば、物語の時系列的にはテレビアニメ『Fate/Zero』を観て、その後にテレビアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』や『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」』を観るとわかりやすい部分はあると思います。

テレビアニメ『Fate/stay night [Unlimited Blade Works]』PV

あと、TYPE-MOONのことをまったく知らなくても一つの読み物、 SF 作品として完結している『月の珊瑚』(奈須きのこ、朗読小説として星海社から2011年に発売)も良いのでは。「とってもいい話だよ」「僕の好きな小説なんだ」と渡せるという意味では一番薦めやすいかもしれません。『らっきょ』(『空の境界』の通称)も、奈須きのこさんの味が全開なので初心者にはハードルが高いかもしれませんが、素養がある人にとっては最強に読みやすい作品です。

――好みもあるので、なかなか万人向けにというのは難しい部分もありますね。

そういう意味ではスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』は取っつきやすくて入門に良いと思いますし、実際にそこから入った人もたくさんいらっしゃるのでは。ほかには佐々木少年さんのマンガ『真月譚 月姫』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2004-2010年)やリヨさんの『マンガで分かる! Fate/Grand Order』(KADOKAWA、2017、2019年)なども選択肢に入ってきますね。

Fate/Grand Order(FGO)

TYPE-MOONが贈るスマートフォン向けRPG。プレイヤーは、人類最後の“マスター”となり、人類史に登場する英雄たちを召喚して戦う。島﨑さんはドラマCDやアニメ版で男性主人公/藤丸立香を演じている。

ただ本当に人それぞれです。話を聞いて「なるほど。あなたならこれがいいかな」といったように、一人一人カウンセリングしないと答えは出せませんね(笑)。

『真月譚 月姫』第1巻(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2004年)

『真月譚 月姫』第1巻(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス、2004年 Amazon
――カウンセリングをしてほしい人はたくさんいそうです(笑)。作品数が多いということは逆に「入り口はどこでもある」とも言えそうですね。

そうですね。たとえば歴史上の人物であるジャンヌ・ダルクが好きなら「ジャンヌが出ているから」という理由で、『FGO』を選んでもいいと思います。何から入っても、どこからでも入れるのがTYPE-MOONの良さだと思います。

島崎信長

――では島崎さんにとって、TYPE-MOON作品とは?

ロマンと夢の物語です。僕を含めてみんなにそれを見せ続けてくれている場所、作品たちだなって思いますね。

『FGO』藤丸立香は「最後は気持ちで動く」 TYPE-MOONファンとして演じる醍醐味

島崎信長

――ここからは劇場版『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』の『後編 Paladin; Agateram』についてお聞きします。収録を終えての心境はいかがでしょうか。

本来なら、他のキャストの皆さんのお芝居も、「こういう演出になったんだ」「こういうシーンになったんだ」ということも収録時にリアルタイムで体験できますが、コロナの影響もあってバラバラで収録したため、自分のシーン以外は知らない部分が多いです。でき上がったものを観るのは楽しみですし、特にラストシーンにはとっても期待しています。

ただ『FGO』に関していえば、このキャラクターとして掛け合いをするのは初めてでも、ゲームでよく(声を)聴いているし、役者さんも存じ上げている方が多く、前編では一緒に収録できたこともあって、ちゃんとつながっていられるだけの積み重ねはありました。今回がベディヴィエールの物語ということや、前編での自分も含め他の方へのディレクションを聞いて、制作陣が作りたいものを把握できていたことは良かったですね。

劇場版『Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』本予告

――TYPE-MOONファンとして『FGO』もプレイされていて、役作りはイメージしやすい部分はありましたか。

最初の最初、FGOの稼働前に収録した、まだプレイヤー男でしかなかった頃のドラマCDでは、ソーシャルゲームで、しかも人によっては性別も違うプレイヤーキャラクターということもあり、あまり個性を持たせすぎず、プレイヤーの皆さんが感情移入しやすかったり聞きやすかったりといった部分を重視しました。TYPE-MOONの主人公は根底にある意志の強さやあふれ出る個性がありますが、そこはむしろ薄め、これから稼働するソーシャルゲームの主人公をみんなに聞いてもらうぞという意識の方が強かったかもしれません。

通常のアニメ作品などでは「個性がない」と言われてしまう“最大公約数”というか、良くも悪くも邪魔をしない主人公という感じでやらせていただきました。いわゆるTYPE-MOONの役作りという感じではなかったかもしれないですね。

島崎信長

――劇場版では、円卓の騎士ベディヴィエールと共に旅をする立ち位置の藤丸立香ですが、演じるにあたり何かこだわったポイントはありますか。

藤丸立香という名前を与えられてからは、もう一人の独立した個性や考えを持つ人物として演じさせていただいているので、劇場版だから特別何か変わったということではなく、今までの藤丸立香の積み重ねという点が大きいかもしれません。

テレビアニメの『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』(2019年)とは違って今回はベディヴィエールが中心の物語。だからといってお芝居を脇役っぽくしようとしたのではなく、ベディヴィエールが中心になることで台本の流れやカメラの位置が自然と変わるなか、演出や映像と向き合って真摯にやっていけば、求められる立ち位置に収まるだろうと考えながらやりました。         

――藤丸立香は島崎さんにとって演じやすいキャラクターでしょうか?

幸い僕は原作の『FGO』をやっていたから、情報が自分の中にあるので、やりづらいと悩むことはないです。藤丸立香はゲームのマスターとも違う独立した存在になっているし、プレイヤーの数だけマスター像はあります。藤丸立香は、あくまで今回の物語でどう表現していくかという中で生み出された人物ですし、さらに言うと同じ藤丸立香でも『バビロニア』と『キャメロット』で完全に同一かというと、またちょっとそれも違うと思います。

特に『キャメロット』は他の人から見た藤丸立香を描いたシーンが多いという一面もあり、そうすると自然と彼自身が変わらなくても違って見えることもあるので、変に決めきっていない分、ある意味演じやすいというか、パッションで演じている感はすごくあります。

いろいろ考えつつも、最後は気持ちで動くのが藤丸立香の良いところ。例えば自分が絶体絶命の状況でもつい体が動いて助けに走って、そのせいで自分や周りを危険にさらしてしまうことも。いろいろ考えていくとリスクを感じて動けなくなるのが普通ですが、藤丸立香はそういうことも踏まえたうえで動けるし動いてしまう。そこが良いところだと思います。計算高すぎず、きちんと考えているけど感情でも動く部分があるので、僕も演じるときは考えながらも感情で動いているところはありますね。

島崎信長

――重厚な世界が魅力のシリーズですが、TYPE-MOONファンである島崎さんが声優として藤丸立香を演じる醍醐味は何でしょうか。

やっていてすごく面白いのは、一般人の藤丸立香がそれこそ神話に登場するような世界中の英雄や神様と出会って、その人たちと交流を持って戦い、彼ら彼女らの背中や生き様を見て成長していくところです。

藤丸立香にとって一つ一つの出会いは強烈で、すごく影響を受けている。もとが普通の子だから余計めきめき成長しているというか、いろんなものをすごく受け取っています。英雄や神様たちからいろんなものを受け取って一歩一歩前に進んでいく感じが、素敵だし楽しいなと思いますね。

プロフィール

島崎信長

島崎信長(しまざき・のぶなが)

12月6日生まれ、宮城県出身。A型。主な出演作品は、『Free!』(七瀬遙)、『ダイヤのA』(降谷暁)、『ブラッククローバー』(ユノ)、『ソードアート・オンライン アリシゼーション』(ユージオ)など。

作品情報
『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』後編 Paladin; Agateram

『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット-』後編 Paladin; Agateram

2015年に誕生し、全世界で6100万ダウンロードを突破した人気ゲーム『Fate/Grand Order』の中でも人気のエピソード・第六特異点を初の劇場アニメーション化。昨年12月に公開された『前編 Wandering; Agateram』では、かつて仕えた王を討つべく彷徨う遍歴の騎士・ベディヴィエール(CV:宮野真守)が、ともに戦う仲間たちと出会い、運命に翻弄されながらも進み続ける姿を、べディヴィエールの心情に寄り添い丁寧に描き出した。
そしていよいよクライマックスを迎える『後編 Paladin; Agateram』では、物語の結末を壮大なアクションと世界観、繊細なキャラクター表現により、美しく、悲壮に描く。ひとりの騎士が辿り着く、旅の終わりとは――。

PICK UP

 

この記事について
俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。
この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。
ORICON NEWS