声優・下野紘を築き上げたキャラ5選 『鬼滅の刃』我妻善逸の愛されぶりには“親戚のおじさん”感覚

下野紘

『うたの☆プリンスさまっ♪』来栖翔、『進撃の巨人』コニー・スプリンガー、最近では『鬼滅の刃』我妻善逸など、枚挙にいとまがないほど人気作品に次々と参加し、主要キャラクターを演じてきた声優・下野紘さん。来年迎えるキャリア20周年の節目を前に、“声優・下野紘”を築き上げた5人のキャラクターを振り返ってもらいました。どのキャラクターにも思い入れがあってなかなか5人に絞れず、「難しいなあ……挙げればきりがない。そう思うと20年、ようやってきたなぁ」としみじみ。悩みに悩み抜いて選んだ“分身”たちは一体、下野さんにとってどんな存在で、どんな影響を与えてきたのでしょうか。さらに、声優デビュー15周年を記念して2016年から始めたソロプロジェクトのファーストフルアルバム『WE GO!』の制作秘話や、自身初の恋愛曲に込めた想いも大いに語ってもらいました。

撮影:石川咲希/Pash 取材・文:遠藤政樹
ヘアメイク/小田桐由加里 スタイリスト/村留利弘(Yolken) 衣装協力/KOH’S LICK CURRO
記事制作:オリコンNewS

声優活動20年目「少しずつ上ってきた」

下野紘

――来年6月21日で声優活動20周年を迎えられます。デビュー当初から変わった部分と変わらない部分はありますか?

応援してくださる人や支えてくれている人たちがいてこそ、ということはずっと変わらず感じていることです。応援し、見てくれる人がいないと、まったく成り立たない仕事です。ファンの方々のおかげで僕は声優の仕事を続けていられる、キャラクターを演じることができる、歌うことができる、ということを改めて強く感じるようになりました。いろんなことを経験してきて、「声優という仕事を辞めないでよかったな」という想いも変わらないですね。

変わった部分でいうと、最近は声優の可能性が広がり、表現の仕方や見せ方、パフォーマンスなどをさまざまな形で発信できる機会が増え、自分自身もいろんなアプローチで伝えられるようになってきました。声優としてもそうですけど、人としても、この仕事をやり続けた結果、変化した部分や成長できた部分はあるかなと思います。

――2001年にデビューし、翌年には主役に起用され、早くから活躍されているイメージがありますが、ご自身ではいかがですか。

作品に出たのは早いのですが、そこから至らない部分や苦労したことがものすごくいっぱいありました。自分としては「もっともっといろんなキャラクターを演じたい」「いろんな仕事がしたい」と思う中で、なかなか自分が思い描いている仕事と結びついていかない、そんな歯がゆい時期がデビューからしばらくはありましたね。

もともと声優になりたいと思って目指したものの、実は人前で何かを表現したり、人前でしゃべるのも苦手でした。「失敗しちゃいけない」という思いが強すぎて、うまく表現できなかったり、あわあわしてしまったりということも多かったです。

――その時はどんなことを考えていたのでしょうか?

ただただヘコみました。「なんでできないんだろう」と思いながら、次チャンスをもらえたときに「もう一回頑張ろう」と思い直し、またヘコんで……を繰り返してきました。

あるとき養成所の講師から「お前は生きることに必死すぎる」と言われ、“本当にそうだな”と思いました。「この1行のセリフを失敗したら死ぬ」くらいの気持ちでいたと気づき、思い詰めすぎないようにしようとしたあたりから、少しずつ緊張とうまい付き合い方をしていけるようになった気がします。上がって下がって上がって下がってを繰り返し、少しずつ上(のぼ)ってきた感じです。

【声優・下野紘を築き上げた5人のキャラクター】

 

下野紘                          

【1】“スタート地点”となった初めて尽くしのキャラ――『ラーゼフォン』神名綾人

――さて、20周年を目前に控えた今、“声優・下野紘の節目や転機となったキャラクター5人”を選んでいただきます。まず、真っ先に挙がったのは、デビュー翌年のテレビアニメ『ラーゼフォン』(2002年)の主人公、神名綾人(かみな・あやと)でした。

やっぱり最初に挙げるとしたら、僕にとって“スタート地点”と言っても過言ではない神名綾人ですね。初アニメで初主人公、さらに言えばオーディションで受かったのも初めてという、本当に初めて尽くしのキャラクターでした。

実はこのキャラクターのオーディションに受からなかったら、声優を辞めようと思っていました。「才能ないのだろうな……」と考えていた時期で、僕の声優生活も、彼と出会っていなければ、今はなかっただろうと思います。

『ラーゼフォン』コンプリート Blu-ray BOX、メディアファクトリー、2011年

『ラーゼフォン』コンプリート Blu-ray BOX、メディアファクトリー、2011年

『ラーゼフォン』
アニメーション制作:ボンズ。舞台は21世紀初頭の東京。高校生・神名綾人は、不思議な少女の導きで、巨大な人型の存在「ラーゼフォン」が出現する瞬間に居合わせる。侵略に遭う東京を脱出するため、ラーゼフォンに同調し、綾人は体内へと入っていく……。

――役作りで心がけたことなど、覚えていることはありますか?

そんなことを考えられないぐらい余裕がなかったです(苦笑)。ただ、余裕がなく一生懸命だったり、振り回されていたり、そういった部分が神名綾人と合致したというのはあったかもしれない。

――収録現場での思い出深いエピソードはありますか?

本当に何もわからなくて、現場に入ったとき、「おはようございます」のあいさつをどのタイミングで言えばいいのかさえわからないぐらい緊張していました(笑)。名だたる声優さんたちばかりで、“みんな仲良くしゃべっている。僕だけ新人で誰も知らないけどどうしよう。あいさつはどのタイミングですれば……”なんて心の中で焦っていたら、マネージャーから「いいから行け!」って言われました(笑)。

当時はがむしゃらすぎたのか、ある大ベテランの方が僕のことをイジってきてくださったのに、その気遣いに気づかず「ちゃんとやってますよ!」って言い返したこともありました。その方は面白がって笑っていらっしゃったらしいのですが、周囲のスタッフは「何てことを言うんだ!」と焦っていたそうです。

――ちなみに、その大ベテランの方というのは……。

実はどなたにイジられたのか見えていなかったのですが、内海賢二さん(※)だったと後で聞きました。出渕裕さん(『ラーゼフォン』監督)から、「あの内海さんに対して、『ちゃんとやってますよ!』じゃないだろう」と言われました(苦笑)。いやあ……今だったら考えられないですね。今ならもう少し違う対応をしていたはずです。

※内海賢二さん……『北斗の拳』ラオウ役、『鋼の錬金術師』アレックス・ルイ・アームストロング役など。『ラーゼフォン』では亘理士郎を演じた。1937年~2013年。             

【2】「少しずつオーディションにも受かるようになった」転機の役――『CLUSTER EDGE』アゲート・フローライト

――続いては『CLUSTER EDGE(クラスターエッジ)』(2005年)のアゲート・フローライト。天真爛漫な笑顔に破天荒な行動というのが魅力のキャラクターです。

仕事が増えていく転機となったのが、『CLUSTER EDGE』でした。この作品に関わらせていただいた後、いろいろな仕事やキャラクターをやらせてもらえる機会が徐々に増えていったんです。……神名綾人とアゲートは決まりとして、このあと誰にしようか困るな。

『クラスターエッジ 1』DVD、バンダイビジュアル、2006年

『クラスターエッジ 1』DVD、バンダイビジュアル、2006年

『CLUSTER EDGE』
アニメーション制作:サンライズ。20世紀初頭のヨーロッパを彷彿とさせる異世界が舞台。各国の名家の子息が在籍する名門校「クラスターE.A.」に一人の少年、アゲート・フローライトが転入してきた。アゲートには、本人も知らない出生の秘密と、「奇蹟」を起こす不思議な力があった……。

――多くのキャラクターを演じている中で5人選ぶというのは大変ですよね。

5人に絞るのは難しい。タイミングごとにいろいろありますからね。例えばパッと挙げてみても、『バカとテストと召喚獣』(2010~2011年)の吉井明久、『みつどもえ』(2010~2011年)の矢部智、『進撃の巨人』(2013年~)のコニー・スプリンガー、う~ん……増えるな(笑)。

ただ、声優活動の“ターニングポイント”として振り返ると、『CLUSTER EDGE』でアゲートをやってから少しずつオーディションにも受かるようになったので、外せないですね。             

【3】声優・下野紘を広く世に知らしめた“おバカ”キャラ――『おおきく振りかぶって』田島悠一郎

――次は、悩んだ末に『おおきく振りかぶって』(2007年)の田島悠一郎(たじま・ゆういちろう)を選ばれました。主人公・三橋廉(CV:代永翼さん)と同じ西浦高校野球部随一の実力者で、普段はちょっとおバカだけど決めるときは決めるところがクセになるキャラクターです。

本格的に“声優・下野紘”という存在を広く知ってもらえたきっかけは多分、『おおきく振りかぶって』かなと思いますね。

左が田島悠一郎/ひぐち アサ『おおきく振りかぶって』31巻、講談社、2019年

左が田島悠一郎/ひぐち アサ『おおきく振りかぶって』31巻、講談社、2019年

『おおきく振りかぶって』

原作:ひぐちアサ アニメーション制作:A-1 Pictures。埼玉の公立校・西浦高校野球部が舞台。ピッチャーの三橋廉は、中学時代、祖父が経営する群馬県の三星学園のエースだったが、“ひいき”されているとチームメイトから嫌われ、自虐的で暗い性格になってしまう。人間不信に陥り、隣県の西浦高校へ進学。部員は新入生ばかり10人の無名野球部が、悩みながらも仲間とともに成長していき、甲子園優勝を目指して奮闘する。

――下野さんはギャップがあるキャラクターに定評がありますが、田島はまさにギャップが魅力ですよね。

田島に関しては、がむしゃらに一生懸命演じるだけだったので、もう田島のキャラクターに“おんぶに抱っこ”みたいなところはありましたね。

実は、「田島って、そんなに言われるほどカッコいい?」って思っていたこともありました。決めるときに決めるカッコよさはわからなくはないのですが、バカなときが本当にバカだなって(笑)。

田島と関わるようになって、キャラクターとの向き合い方がより密になっていった感じはありました。というのも、アニメでキャラクターを演じる以外にイベント出演などの機会が徐々に増えてきたので、お客さんの反応を生で感じられたのが大きかったのかも。そのあたりから、失敗してもヘコむだけじゃなくて、“でも、ここは面白くできた。じゃあ、もっとこうしたらこの子(キャラクター)の良さが増すのでは”みたいな考え方ができるようになって。

それで少しずつ自信というか、工夫する余裕が出てきました。そういう感覚は『おお振り』あたりからですかね。             

【4】長い付き合い、兄弟に近い気持ちもある――『うたの☆プリンスさまっ♪』来栖翔

『うたの☆プリンスさまっ♪』

アニメーション制作:A-1 Pictures。2010年に発売された同名の人気ゲームのメディアミックス作品。超人気アイドル・HAYATOに憧れ、作曲家を夢見る七海春歌は、念願かなって競争率200倍の芸能専門学校「早乙女学園」作曲家コースに入学。アイドルコースの1人とペアを組み、卒業時に行われる「シャイニング事務所 新人発掘オーディション」の合格を目指す。そんな春歌の前に、アイドルになることを夢見る6人のプリンス、一十木音也(いっとき・おとや)、聖川真斗(ひじりかわ・まさと)、四ノ宮那月、一ノ瀬トキヤ、神宮寺レン、来栖翔(くるす・しょう)が現れる。

――続いては、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズ(2011年~)の来栖翔。男気と愛きょうあふれるキャラクターですね。身長が低いことを気にしているところもキュートです。

やっぱり外せないのは『うたプリ』。翔に関しては長い付き合いをさせてもらっているというか、一緒に歩んでいるキャラクターですね。

それまでは、イベントで歌ったり、パフォーマンスをするのが苦手でした。人前に立つのは緊張しますし、声の仕事として芝居するのではなく自分自身がパフォーマンスで表現するということに、あまり積極的になれない面もありました。

そういう部分で、翔には、一緒にステージングなどを作り上げて支えてもらってきたなと思います。

『劇場版 うたの☆プリンスさまっ♪ マジ LOVEキングダム』スペシャルライブPV

――下野さんにとって、翔はどんな存在ですか?

すごく支えてもらっていて、兄弟ではないですけど、それに近い気持ちかな。一緒にライブの稽古をしたり歌の練習したりを続けてきたし、彼がいなかったら僕は『うたプリ』のライブには出られなかったでしょうしね。それに翔がいなければ、自分自身がアーティストとして歌を出そうとも思わなかった。

初めて下野紘として歌を出すとなったときに、翔にどれだけ支えてもらって歌っていたのかを実感しました。“翔”としては歌えるけど、“下野紘”自身の歌い方とはなんぞやと、わからなくなってしまうこともありました。ステージングは翔を通じて学びましたね。                          

【5】絶対にやりたかった役「本当に大人気、ご活躍で(笑)」――『鬼滅の刃』我妻善逸

――最後は思わず「待ってました!」と言ってしまいそうな、「我妻善逸」(あがつま・ぜんいつ)。原作マンガ、アニメ共に大人気の『鬼滅の刃』(2019年~)の人気キャラクターで、主人公・竈門炭治郎(かまど・たんじろう)の同期の鬼殺隊(きさつたい)剣士です。ここで名前が挙がらなければ、あとでお話を聞くつもりでした(笑)。

挙げたいキャラクターは他にもあるけど、最近だとやっぱり善逸は、ね。ここ最近、本当に大人気、ご活躍で……と思います(笑)。

『鬼滅の刃』

原作:吾峠呼世晴 アニメーション制作: ufotable。大正時代の人喰い鬼の棲む世界が舞台。炭売りの心優しき少年・竈門炭治郎は、人喰い鬼に家族を惨殺されたことで生活が一変。唯一生き残ったものの、凶暴な鬼に変異した妹・禰豆子(ねずこ)を元に戻すため、さらには家族を殺した鬼を討つため、2人は旅に出る。

――まさに! 善逸に対してはどのような気持ちを抱いていますか?

「絶対にやりたい役」でした。僕の声優人生の中で、20年培ってきた表現を最大限に出せるキャラクターが「我妻善逸」だと思いました。シリアスで物静かなときもあれば、ギャーギャーうるさい瞬間もあり、いろんな表情を出してくるこのキャラクターを絶対にやりたかった。

他の誰かが我妻善逸をやることを全然イメージできなかったほど、やりたい思いが強かったです。だからいろんな人に好きになってもらえてよかった。最初はやりながら「うるさいな、こいつ」なんて、自分で思っていたんですけど(笑)。

TVアニメ『鬼滅の刃』我妻善逸スペシャルPV

――善逸役をやってから、小学生の女の子からもファンレターが届いたそうですね。

そうなんですよ! 本当にびっくりするぐらい小学生からのファンレターが増えましたし、「娘が好きなんです」とか「孫がファンなんです」とか、いろんな年齢層の方たちからファンレターをいただきました。本当に善逸が幅広くいろんな方に愛されてよかったなと思います。

――そこまで多くの方から熱烈な支持を集めた心境はいかがですか?

感覚的には“親戚のおじさん”です(笑)。「うちの善逸が本当によくしてもらって、みんなありがとうね」みたいな気持ちですね。

自分に近いキャラクターは善逸!?「結構似ているのかも」

下野紘

――5人挙げていただきましたが、声優としてのスタンスを形づくる頃のキャラクターが多めな印象ですね。

どうしてもねぇ……。特に『ラーゼフォン』から『おお振り』までの間が一番、一喜一憂が半端なかったと思うので。

――他にも『神のみぞ知るセカイ』(2010~2013年)の桂木桂馬とか『デュラララ!!×2』(2015~16年)の黒沼青葉など、まだまだ語っていただきたいキャラクターはたくさんいます。

挙げようと思えば全員エピソードがありますし、細かくターニングポイントを決めるとなるといろいろ名前を出したいですが、今回は飲み込んでおきます(笑)。

――振り返ってみて、キャラクターの印象やイメージなどが当初と変わったり、新たに気づいたことなどはありましたか?

基本的にキャラクターに対してのイメージが変わることはありませんが、“今の自分が演じたらどうなるのかな”というのは考えますね。もっと理解度が深くなっているのではないかとか、キャラクターともっと対話して工夫できるかもしれないとか、ここはこういうアプローチで演じたほうがよかったのかなと考えたりもします。

――では、挙げていただいた5人のキャラクターとご自身が似ているところはありますか?

難しいな(笑)。タイミングごとに各キャラクターに助けてもらったり、この部分は似ているというところがあるので。

最近では、善逸と似ているかもしれない。自分もビビリな部分はありますし、でもやらなければいけないことがある中で緊張しながらも頑張ってやり抜くという側面も持っていると思う。

あと、善逸が周りの人たちのことをいろいろと考えられる気持ちを根底に持っているところも、結構似ているかも。臆病で逃げたりもするけど、最終的には貫き通す、やり続けるところは、似ているかもしれないと思います。

まずは外見から入るのが“アーティスト・下野紘”方式

下野紘

――先ほど、「『うたプリ』の来栖翔に出会っていなければ、アーティストとして歌を出そうとも思わなかった」とおっしゃっていましたが、“アーティスト・下野紘”についても聞かせてください。8月19日に待望のファーストアルバム『WE GO!』がリリースされます。2018年3月発売の『Color of Life』はミニアルバムで、今回は初のフルアルバムということですが、あえて段階を踏んだということでしょうか?

そうですね。下野紘として歌うことに関しては、一から少しずつ歩んできて、いきなりフルアルバムではなく、段階を踏んでいきたいと考えていました。スタッフ陣とも相談しながら作り上げ、今回満を持してファーストフルアルバムという形になりました。

下野紘

――いつ頃からフルアルバムの制作を意識されていたのでしょうか?

ファーストシングル『リアル-REAL-』(2016年3月)の頃から「いつか出せたらいいな」とは思っていました。ただ、タイアップのお話をいただいてシングルを立て続けに出すこともあったりしたので、どのタイミングになるか、あえて具体的には決めず、少しずつ進めていければいいなと思っていたんです。

そうした中、一昨年ぐらいから「フルアルバムを作りましょう」という話が出はじめ、去年の春先から何回も話し合いをしながら少しずつコンセプトを決めたりと、楽曲制作を進めてきました。

――そのコンセプトが“MODS”(イギリスで1950年代後半~60年代半ばにかけて流行した音楽やファッション)ですね。

どういうテーマでいくかとなったとき、「(ビジュアルは)今回はモッズスーツでいきたい」と言われたのですが、実はファーストシングルも「今回は革ジャンでいきましょう」「じゃあ革ジャン=ロックだよね」という決め方だったので、同じ方式ですね(笑)。

――ビジュアル面からコンセプトを決めていくというのは、ちょっと意外な手法ではありますね。

ビジュアルはやっぱり大切。外見から徐々に内に入っていき、そこからさらに広げていくという形です。今回も早い段階でモッズスーツを着るという話になって、そこから方向性や曲調を決めていきました。いろんな決め方があると思いますが、ある種、“アーティスト・下野紘”方式といったところですね(笑)。

――3曲目のリード曲『WE GO! -On Your Mark-』は、親交のあるヒャダインさんが作詞作曲を手がけられていますね。

フルアルバムを作る中で1曲、僕に縁がある方に楽曲提供をしてもらえたらと提案させていただき、スタッフからあげてもらった候補の中にヒャダインくんの名前がありました。下野紘のギターロックとヒャダインのコラボレーションというのが面白そうだなと思いましたし、なかなかない機会だったのでお願いすることになりました。

――下野さんからはどのようなリクエストを?

ライブを想定した上で、よりMODSかつギターロック要素を強めにしたくて、「ギターとドラムをガンガン前に出してほしい」とリクエストしました。

自身初の恋愛曲を作詞「あえて歌ってきませんでした」

下野紘

――どの楽曲も思い入れはあると思いますが、中でも1曲を選ぶとしたら?

難しいですね……。でも、思い入れという意味では高橋諒さんと2人で作曲し、作詞はすべて僕1人でした『アトサキ』という失恋の歌です。恋愛曲はこれまで、あえて歌ってきませんでした。それを今回、初のフルアルバムということで解禁にしたんです。

――あえて歌ってこなかった理由は?

アーティスト活動をするにあたって、楽曲の方向性もあったんですが、どちらかというとメッセージ性の強い歌に興味があったのと、作詞面は特にきちんと自分の言葉で伝えていきたいこともあって、安易にラブソングを歌うことに少し抵抗がありました。

でもせっかくのフルアルバムなので、いろんな曲ごとのテーマがある中、1曲くらいラブソングがあってもいいのかなと思い、作詞家のRUCCAさんにも相談しながら、書いてみました。

――10曲目というのがさりげなくて効いていますよね。

1曲目の『Departure』で旅立ち、『I’m Home』で帰ってくる流れは決まっていたんですが、旅立って決意していろんなことを経験し、『アトサキ』で失恋して帰ってくるのかっていう(笑)。

――具体的にはどんな想いを込めたのでしょうか。

アーティスト下野紘史上初めてのラブソングは失恋ソングとなりまして、タイトルの「アトサキ」は2人が出会ってから別れまで、そして今があり、この先がある。この時間軸を一つの線に見立てて未来を見据えた前向きな大人の恋愛ソングにしたつもりです。「たとえ離れてもいつまでも幸せでいてほしい」と、別れてしまった恋人に思いを馳せる人は多いんじゃないかと思って。そんな気持ちを共感してもらえたらうれしいです。

――お話をうかがってから曲を聴くと、さらに心に沁みそうですね。では最後に、今後の目標や理想の声優像があれば教えてください。

声優、役者としてはキリがないですよ。大ベテランの先輩でも「今でも全然10代の役をやれる」という方もいらっしゃいますから。その中で役を勝ち取っていかなきゃいけないと考えると、狭き門だなと思いますが、挑戦し続けたいですね。

4年前にアーティスト活動を始めたのは、その当時「現段階で、声優・下野紘はここがMAX」「もう一段階スキルアップをしたいけど、どうすれば……」と壁にぶつかったことがきっかけでした。

このままじゃダメだ、苦手なことや避けて通ってきたようなことにも挑戦し、何か見つけていかないとと思い、あまり得意ではなかった歌にチャレンジしてみようと思ったんです。その結果、新たに得られたものもあれば、今までやってきたことを活用できる部分もあり、一皮むけた部分はあるのかなとは思います。

声優としてというより一人の人間としての理想像は、新人や若手ともバカ話ができるような、そういう大人になりたい。自分自身、イジられつつもいろいろ気にかけて助けてくださる先輩が多かったので、そういうところに気がつけるような大人でありたいと思います。

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プロフィール

下野紘

下野紘(しもの・ひろ)
4月21日生まれ、東京都出身。2001年、ゲーム『リリーのアトリエ〜ザールブルグの錬金術士3〜』のテオ・モーンマイヤー役で声優デビュー。翌2002年に『ラーゼフォン』の主人公・神名綾人役でテレビアニメデビューを果たし、『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズの来栖翔、『鬼滅の刃』我妻善逸など数々の人気キャラクターを演じてきた。2003年~2007年10月まで、声優ボーカルユニット「Root」リーダーとして活動。2016年3月には、声優デビュー15周年を記念し、シングル『リアル-REAL-』でソロ歌手デビューした。シングル4作、配信シングル1作、ミニアルバム1作の発表を経て、8月19日に初のフルアルバム『WE GO!』をリリースする。

 

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俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。
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