祝・再始動! 年間500本以上見る“映画狂”田中俊介が絶対に見てほしい5作品

田中俊介

2020年、役者として本格的に再始動となった田中俊介さん。

射るような強いまなざしと、心がそのまま溢れ出ているかのような、浸透圧の高い演技に引き込まれます。

そんな田中さんを語る上で欠かせないのは、「映画」。役者として出演しているという意味はもちろんですが、実は田中さん、年間500本(!)以上の映画を見る、自他ともに認める“映画狂”なのです。Twitterでは、自身が感銘を受けた作品について日々発信しており、また、定期的に『田中俊介映画祭』を開催して、自身の出演作を全国津々浦々で上映しています。

田中さんの映画愛の源泉を探るべく、映画との“なれそめ”と、田中さんの人生に力を与え、かつ「絶対見てほしい」と語る映画5作について話していただきました。そこから見えてきたのは、映画を1本でも多く見るためのタイトなスケジューリング、映画好きとしての「責任感」と、先人たちに対するリスペクト、そしてファンへの深い愛情でした。

熱い思いをのせた1万字ロングインタビューです。

撮影:吉松伸太郎 スタイリング:藤長祥平 取材・文:石黒容子

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田中俊介

「眠くても歯磨きするのと同じ」。一日に絶対一本は見る。

――田中さんはとにかく映画を見ていますね。

見まくってます(笑)。最低でも一日に一本は絶対見ようって心がけていて、去年も、約524本見ました。

――すごい! どうやって時間を捻出してるんですか?

捻出方法は前日に考えます。「明日の仕事はこうだから、このスキマに見るタイミング作れるな」とか、もしギッチリ仕事で合間がないなら、早起きして朝見てから仕事に行くとか。あるいは、「明日集合が遅いから、ちょっと夜ふかししても大丈夫だな」というときは、帰って来てから夜中に見たり。
もちろん、映画館で見れば作品の良さはいっそう伝わるので、本当は映画館で一番見たいんです! だけど、見られないときは移動中の新幹線や車の中とか、いろんなところでスマホで見ます。

――映画を中心に生活が回っているかのようですね。

うん、生活の一部になってますね。眠たくても歯磨きするじゃないですか? それと同じです。 

――歯磨きと同じ……! 名言です(笑)。映画が生活に割り込んでくるようになってきたのはいつからですか?

4、5年前くらいかな。子どものときからずっと好きだったし、それまでも結構な数を見ていたんですけど、今みたいな狂ったハイペースになったのは、そのあたりからですね。

この仕事をしていると、業界の人とたくさん会うじゃないですか。そのなかで、あるとき「あれ?」と思ったんです。自分は映画が好きだと言ってきたけど、いろんな人と話すなかで、「この世界にはさらに輪をかけた映画好き、というか“映画狂”がめちゃくちゃいるやん!」と痛感するようになりまして……。

――(笑)。とくに映画に関しては、上には上がいますよね。

はい。その方たちと相対したときに、果たして自分は胸を張って映画好きだと言えるのかな?と。それで、もっとしっかり深く映画を勉強したいなと思うようになりました。見れば見るほど好きになって、もっともっと映画の知識を得たいし、たくさん見たい!と、どんどん「好き」が加速してきましたね。 そもそもこの世界に入ったのは、映画が好きで、芝居がやりたいからでした。高校まで野球漬けだった僕が、大学に入って、普通に楽しいながらもなんとなく物足りなさを感じていた。そんなとき、たまたま縁あって入った名古屋のモデル事務所で初めて受けた演技レッスンが、僕にとっては衝撃的で。

――どんなところが? 

うまくできなかったんです。演技を初めてやってみて、めちゃくちゃ難しいなと思った。同時に、チャレンジしたけどできなかったのが悔しかった。でも、「なんかわかんないけど、できるようになったら楽しいだろうな」って思って。

それまで、野球しかやってこなかったから、野球はできたんです。でも、ほかのことにチャレンジしたことがなくて。だから、初めてレッスンを受けたあと、なんだか思いがワっと溢れてきて、「あっ、俺、今これがやりたいんだ!」と自覚しました。

大きな出逢いでした。それまで僕はこの世界に入る気はまったくなかったので、びっくりですよね。

――奇跡的なタイミングだったんですね。その出会いがなかったら、田中さんは今何をしていたんでしょうね?

多分、なんかの営業やってましたね(笑)。あははは!

田中俊介

田中俊介

精神的に苦しいとき、唯一そこに巻き込まれない光が、映画だった

――今年30歳と節目の年ですが、年齢を重ねて、さまざまな経験をしていくなかで、もっとも「映画に支えられた」と感じたのは、どんなときですか?

そうですね……誰しもあると思うんですよ。精神的に落ち込むときとか、人生どん底のとき。そんなときに、僕が支えられたのはやっぱり映画だったんです。映画が好き、芝居が好きだという気持ちは、これまで想像もしてない精神的な苦しみが襲ってきたときにも、唯一巻き込まれない光だった。

逆に言うと、映画とか、芝居をすることまでそこに巻きこまれてたら、たぶん僕、この世界から退いていたと思います。だけど、映画だけは光ってたんで、それに救われたんですよね。しんどい期間も、映画はつねにずっと見てたし、映画関係の人たちと会って楽しい話をして、また映画見て、作品づくり一緒にして……そういうことをやり続けた。……うん、映画は、僕にとって救いであり、自分を支える背骨でしたね。

田中俊介

田中俊介の人生に光を与えた映画5選

――そんな田中さんの人生に、とくに力を与えたという作品5選。ここからはプレゼンお願いします!

「映画ってすげえ!」映画好きになるきっかけの“トラウマ映画”                                     

『ジュマンジ』AmazonDVDコレクション、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、2015年

『ジュマンジ』AmazonDVDコレクション、ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、2015年

『ジュマンジ』(1995年公開)

監督:ジョー・ジョンストン。いじめられっ子のアランは、ある日ふとしたことから土の中に埋もれていた木箱を見つける。箱には“JUMANJI”という文字が刻まれ、中にはすごろくのゲームが収められていた。“JUMANJI”とは、ゲーム盤でのできごとが現実にも起きてしまうこの世で最も危険なゲームだった。そうとは知らず、帰宅したアランはガールフレンドのサラと早速ゲームを始めてしまう……。

子どもの頃見た映画で、一番記憶に残っている作品です。小学生の頃によくテレビで放送されていたのをたまたま見てしまい、ものすごい衝撃を受けて……めっちゃ怖かったんですよ。独特の「ドゥン、ドゥンドゥン」みたいな低音のBGMとか、「ジュマンジ」の異世界から蜘蛛やコウモリ、ライオンとかの動物が現れて人間を襲ったり、猿が車を運転して大暴走したり……。

子どもだったから、自由な想像力で「これ、もしかしたら現実世界で起こっちゃうかも?」ってドキドキして、恐怖でした。だから、いわばトラウマ映画でもあります。この作品で「映画ってすげえ、やべー!」って思った。

何が怖いって、『ジュマンジ』で起こってることって、現実で起こるかも、という説得力がすごくあるんですよね。しかも子どもも容赦なくひどい目に遭うので、子どもが見ちゃうと、「自分も次の瞬間こうなるかも!?」って思っちゃう。

先日も新作『ジュマンジ/ネクスト・レベル』が公開されていて、もちろん面白かったんですが、僕が一番好きなのはやっぱり初代ですね。95年のロビン・ウィリアムズ主演の『ジュマンジ』!  何度見てもおもしろいっすよ。「明らかにCGだよね!」っていうB級感も含めて大好きです(笑)。

田中俊介

70年代のハチャメチャ感とエネルギー、危険すぎるカーチェイス                                     

『狂った野獣』DVD、TOEI COMPANY,LTD、2011年

『狂った野獣』DVD、TOEI COMPANY,LTD、2011年

『狂った野獣』(1976年公開)

監督:中島貞夫。目の病気で会社をクビになったテストドライバー・速水は、友達の美代子と宝石泥棒を計画。数日後、まんまと宝石を盗んだふたりは、警察の追っ手をくらますため別々に逃亡。作戦は成功したかに見えたが、速水の乗るバスに、警察に追われる銀行強盗・谷村と桐野が乗り込んできたことから、事態は一変。主演・渡瀬恒彦が、ド迫力のカーアクションに挑戦したサスペンス・アクション。

70年代の日本映画のハチャメチャ感というか、「よくわからないけどめっちゃエネルギッシュ!」な感じが画面からは伝わってきます。バスジャックをテーマにした話で、カーアクションがものすごくって、今の日本映画ではやれないような勢いに溢れてる。時代の雰囲気がビシビシ感じられます。

この時代って、ATG(日本アート・シアター・ギルド。1961年から80年代にかけて活動した、非商業的なアート系映画を多く制作した映画会社)が盛り上がっていたり、いろんなものが生まれています。今のように「これやっちゃダメ、あれもNG」というコンプライアンスとかもない(笑)。自由にやれて、そして、ときには危険をおかしてまで面白いものを作ろうという気概に満ちていたように見えます。

もちろん今は同じやり方はできないし、しちゃダメだと思うんですが、その頃の映画人が作品に懸けた思いは間違いなく映画に宿っていて、エネルギーが放たれているんです。

主演の渡瀬恒彦さんは、この映画のためにバスの免許とられています(笑)。自分で運転してカーチェイス……実際、撮影もかなり危険だったんじゃないかと。バスは横転するわ、白バイはなぎ倒すわ……一歩間違えればケガ人で済まないレベルのことが起こっていて、エグいですよね。

「和モノB級パンクムービーの傑作」って言われていますけど、とんでもない、超S級映画ですよ!

田中俊介

映画の“つまらない面白さ”を知った                                     

『死霊の盆踊り』デラックス版DVD、ジャパンホームビデオ、2005年

『死霊の盆踊り』デラックス版DVD、ジャパンホームビデオ、2005年

『死霊の盆踊り』(1965年公開)

監督:A・C・スティーブン。エド・ウッドが脚本を手掛けたホラーコメディ。ホラー小説家・ボブは婚約者のシャーリーと共に、小説のアイデアを求めて雨の墓地に向かうが、交通事故に遭ってしまう。そんな彼らの前に暗黒の女王が現れ、死者たちが次々と踊り始める。

「つっまんねー! 何見せられとんだ、これ」と、映画の“つまらない面白さ”を知った作品です。でも、めちゃくちゃ印象に残る。また見たくなる謎の面白さがあるんですよ。

だってこの映画、めちゃくちゃなんです。役者の芝居も棒読みハンパないし、カンペ読んでるし(笑)。設定も、最初夜だったのに急に明るくなったりとかぐちゃぐちゃだし、衣装もださいし、突然謎の踊りが始まって、無駄におっぱい出すし(笑)。一体、何がしたいんだ!……という意味で、つまらない面白さを知った映画ですね、ふふ。

こういう作品に出会うと、映画の見方が増えると思うんです。映画って、「この作品は絶対泣かなきゃ」とか「面白がらなきゃ」みたいな決まりって実はなくて、作品によっては「つまんねーな!」という楽しみ方もができる。ホラー映画を見ていて「怖い」の限界値を超えると、逆に笑えてくるのと同じというか。

違う見方ができることを知ると、見たい映画が増えてくる。僕の場合、そのきっかけになったのが『死霊の盆踊り』ですね。映画配給会社のGAGAが最初に配給したのがこの映画、っていうのがまたびっくりです。はじめにこれを選ぶか、と(笑)!

田中俊介

「つまんねえ人生送るんじゃねえ!」巨匠の思いが駆り立てるもの                                     

『止められるか、俺たちを』DVD、Happinet、2019年

『止められるか、俺たちを』DVD、Happinet、2019年

『止められるか、俺たちを』(2018年公開)

監督:白石和彌。1969年春、21歳の吉積めぐみは新宿のフーテン仲間の“オバケ”に誘われて、“若松プロダクション"の扉をたたいた。当時、若者を熱狂させる映画を作りだしていた若松プロは、ピンク映画の旗手・若松孝二を中心とした新進気鋭の若者たちの巣窟であった。1969年を時代背景に、何者かになることを夢みて若松プロダクションの門を叩いた少女・吉積めぐみの目をとおし、若松孝二ら映画人たちが駆け抜けた時代や彼らの生き様を描く。

『止め俺』は、映画づくりに情熱を燃やす人たちの姿を描いていて、若松孝二監督の「社会に抗っていくんだ」とか「映画で世界を変えるんだ」という思いや、「つまんねえ人生を送るんじゃねえ!」というメッセージとエネルギーがギンギンに詰まっています。

若松さんの本も好きで読んだりするんですけど、純粋に「かっこいいなー」って憧れるし、あの当時の映画づくりにかけていた人たちの熱量がすごく感じられます。

この映画を見て思うのは、将来どうなるかわからないし、明日死ぬかもしれない世界に生きていても、それまで本気でやってきたものは残るし、それは変わることない事実だということ。自分の熱量を注げるものを見つけられるのは、実はすごく幸せなことだと思うし、僕もそうありたいと思う。

この映画の主人公である恵(めぐみ)さんが本気で映画を愛して情熱をかけた日々はまさしく青春であり、生きた証。自分もちゃんとそれを残したいなと思います。

今年2020年は、僕にとってあらたなスタートを切る年になったので、元旦にはこの映画を見直しました。僕の今年の抱負のような映画ですね。

田中俊介

田中俊介

田中俊介がいつかは演じてみたい、すがすがしい「クズ」とは                                     

『ベテラン』DVD、ビクターエンタテインメント、2016年

『ベテラン』DVD、ビクターエンタテインメント、2016年

『ベテラン』(2015年公開)

監督:リュ・スンワン。ソウル警視庁の広域捜査隊に所属するソ・ドチョルは、気性は荒いが男気あふれるベテランの熱血刑事。かつて世話になったトラック運転手が、賃金の不払いに抗議するためシンジン物産の本社ビルを訪れた直後、意識不明の重体に陥ったことを知ったドチョルは、不審を抱いて真相究明に乗り出す。その直感は的中し、この謎めいた事件には巨大財閥シンジン・グループの御曹司、チョ・テオの血も涙もない悪行が絡んでいた。

この作品には、僕が今すごくやりたい役が登場しているんです。ユ・アイン演じる、大財閥のワガママ放題の御曹司、チョ・テオ。めちゃくちゃ悪いです(笑)。

この映画を初めて見たのは3年くらい前でしたが、チョにむちゃくちゃムカついて。「なにコイツ! ほんと殴りてえ!!」って、苛立ちを残されたんですよね。それが強烈で、「俺もこういう役やってみたいな」と思うようになりました。

僕は今まで、アングラな世界に生きる男とか、暴力的な性格で人を殺める男の役は何度か経験があります。でも考えてみたら、「なんやかんやで根はいいやつ」とか、「精神的な弱さがあるから表面を取り繕って悪に走ってしまう」といった役どころだった。だから、『ベテラン』におけるチョのような純粋な悪というか、性根から腐ってるやつをやりたいな!と思うんです。

この映画がきっかけでユ・アインさんが大好きになりました。彼はさわやかな青年役もできるけど、悪人をやらせるとまたすごい。最近見た『国家が破産する日』(2018)という社会派作品にも出ていて、そこでは自分の信念を貫く金融コンサルタントを演じていて、人間の悪い部分も見えたりする役どころ。

そこでも、ふとした表情に「やっぱユ・アインはすごいなー!」と思うシーンがある。僕、役者さに「好き」とか「憧れる」という気持ちを抱くことは少ないんですけど、ユ・アインさんだけは意識して見ちゃいますね。やっぱ、魅力的ですね。

『ベテラン』で彼が演じたような、振り切ったすがすがしいまでのクズ(笑)、いつかは演じてみたいですね。

田中俊介

「田中俊介映画祭」で全国を飛び回れるのは、ファンがいるから

――バラエティに富んだ5作品、ありがとうございました。もうひとつ、田中さんの映画愛を象徴するものに「田中俊介映画祭」という活動があります。地方もふくめた各地の映画館で田中さんが出演した作品を上映し、時折田中さんも舞台挨拶で登壇するという、ファンにとってはたまらないイベントです。 

2019年から始まった試みですが、もともとは、多くの人に見てもらえる機会が増えないままに上映が終わってしまった自分の出演作品を、「もっと見てもらいたい!」という思いで企画しました。この映画祭は、これまでは自分の出演作だけの特集上映だったんですが、今後は少し変えていきたいんです。

たとえば、僕の『恋のクレイジーロード』(2018)という主演作品は、バスジャックがテーマで、『狂った野獣』と共通点があります。なので、たとえばこの2作を併映する回もやってみたいですね。同じように、僕が主演した『ダブルミンツ』(2017)なら、男同士の愛憎を描いているほかの作品、『ブエノスアイレス』や『ブロークバック・マウンテン』と同時上映するとか。

――面白いですね。

今後そうした企画を続けていけば、僕きっかけで来てくれたお客さんが、過去の名作に出会う。あるいは、過去の名作をスクリーンで見たいと思って来た方が、僕の出演作を観てくださる、ということが起こる……ワクワクしますよね。

――素敵ですね。年代も目的も異なる人たちを結びつけて、新しいジャンルへの入り口を作る。なかなかできない試みです。

実現したいですね。そして、これまで『田中俊介映画祭』は日本全国で開催できています。応援してくださる方たちのおかげでこうして全国飛び回れているので、めちゃくちゃありがたいし、守っていきたいですね。

この映画祭もそうですけど、ファンの方たちが存在しないと僕もこの世界に存在しないって、身にしみて感じています。だから、これからもみなさんに応援してもらえるような活躍をして、いろんなことを一緒に分かち合いたいです。「こんな仕事が決まったよ」「こういう仕事をしたから見て!」って。それを見てくださって、みなさんが喜んでくださるのがやっぱり嬉しい。

僕の活動が役者一本になったことで、ファンの方々と顔を合わせたり、交流する機会が減るとは思います。だからこそ、自分の映画祭は続けていきたいし、みなさんとコミュニケーションがとれる場所を守りながら、あらたな形も開拓したいと思っています。

田中俊介

「好き」のパワーって、やっぱりすごい。それを発信したい

――田中さんは、俳優さんなど同じ業界の方と、映画の話で盛り上がったりしますか?

しますね。やっぱり、「好き」のパワーってめちゃくちゃすごいなと思っていて。いろんなお仕事の現場で映画好きの人たちと出会って映画の話をすると、自分とその人たちの「好き」が原動力になって、仕事の範疇を超えたパワーをまとうんですよね。溢れ出るというか。

あと、やっぱり仕事って、その仕事を好きな人としたいじゃないですか。スキルが同じくらいの人が複数いるとして、そこから誰を選ぶ?となったときに、やっぱ作品への熱量や思い、「この作品に出たい」とか「映画が好き」という気持ちが強いと、「この人と一緒にお仕事したい!」と思ってその人を選ぶし、選んでもらえるんですよね。

――熱いです……!

僕にとっての対象は映画ですけど、それ以外でも「好き」のパワーが持つすごさって、この仕事をしながらすごく感じていて。だから、「好き」をとどめておくのではなく、発信したい。自分のエネルギーを外に出したいし、好きなものはみんなに知ってもらいたい。共有したいじゃないですか。

だから、いま僕はTwitterを始めて間もないですけど、発信する場を手に入れたのですごく楽しいです。見た映画のことをつぶやいてますけど、僕がここで挙げている作品は全部、ホンットに自分が面白いと思ったものだけです。今はやりの忖度とかないっす(笑)。あははは! 純粋に好きなものだけです。

――田中さんが見て良かったと感じたものだけ触れているんですね。

はい。これだけ仕事してたら、いろんな仲いい監督さんや役者さんもいるし、その方たちの作品はもちろん見てます。でも、僕にハマらなかったら挙げないんです。そこはちゃんと貫いてます。

――忙しいなか、これだけ映画のことを発信し続ける、そのこころは?

やっぱり、僕たちの世代が発信していかなきゃと思っていて。僕たちより上の世代は、映画館で映画を見ることの素晴らしさをよく知っているわけです。だけど、僕たちや僕より下の世代って、みんな当たり前のようになんでもスマホで見ている。視聴スタイルが変わっているので、映画館といえばシネコンしか存在しないと思っちゃってるんですよね。「ミニシアターってなに?」「こんな映画あるの?」みたいな。

雑誌やテレビなどで大々的に宣伝されてるものしか知らないのが普通だからこそ、僕ら世代が「こんな良い作品があるんだよ!」って発信することが大事だと思っています。勝手ですけど、僕はひとりの映画好きとして責任を感じています。

田中俊介

給水所に目もくれず、走り続けていた。今は……

――2020年はまさに“田中俊介、再始動元年”。どんな信念をもって、どんなお仕事をしていきたいですか?

基本は変わらないですね。完全に役者一本にはなりましたけど、この世界で10年くらい仕事をしていて、仕事への向き合い方は、最初の頃から一切変わらないです。ただただ今までどおり、ひとつひとつの仕事に愛情をこめてやるだけ、ですね。

変わってきたことといえば……「余裕を持とう」(笑)。ふふふ。これだけやってきて、ようやく気づきました。

――そのほうが仕事にとって、かえって良いですか?

そう。カチカチになりすぎると、つまらない。ラクに構えて、プライベートでも色んな遊びをすることによって、それが仕事に生きてくる。それに、思いっきり遊んだあとに「よし!仕事しよう」って切り替えるのも大事だし。そうやって、やっぱり休むとこは休まないと、精神的にも肉体的にも限界が来ることを最近やっと知りました。僕はほんとに、ずーーーっと走り続けてたので(笑)。

――高校まで打ち込んでいた野球部が終わっていなくて、ずっと続いていたかのようですね(笑)。

そうです! 走り続けるなかで、給水所もあったはずなのに、まったく飲まずに走ってました。「いらないっす! そんな暇ないっす!」って(笑)。今は給水所にフルーツがあったら、すかさず食べちゃいますね(笑)。

――大人になるうえでの、大事な変化ですね

もう30歳になるんで(笑)。

田中俊介

田中俊介

舞台『ピサロ』で、新しい田中俊介を、絶対に生む

――3月には舞台『ピサロ』が控えています。85年に山崎努さん主演で上演された、パルコ劇場の歴史を語るうえでは欠かせない演目ということです。田中さんにとって、どんな魅力がある舞台でしょうか。

『ピサロ』は、生のお芝居ならではの迫力が十二分に伝わる題材だと思います。キャストの人数も含めた舞台の規模もそうだし、錚々たる役者さんたちのエネルギーが、チラシからも伝わってくると思います(笑)。

『ピサロ』チラシ01

『ピサロ』チラシ02

――すごいインパクトでした。

カオスですよね(笑)。パルコ劇場でしか、『ピサロ』でしか味わえないエネルギーが宿ってると思います。台本を読んでいる段階から、ぞくぞくと「これはやばいことになるな」って感じてました。(渡辺)謙さんがどんなピサロを演じるんだろう、ほかのみなさんはどんなお芝居を?と、イメージをふくらませながら準備しています。

――楽しみですね。

楽しみだし、正直怖いです。本当にすごいメンバーなので、そのなかで田中俊介は戦えるのか?と不安になりながらも「大丈夫か? しっかり貫けよ!」と自分のケツをたたいてる自分がいて。ワクワクとドキドキが同居していますね。

――なるほど。田中さんの役どころは?

歴史を下敷きにした内容で、スペイン軍によるインカ帝国侵略がテーマです。スペイン軍の将軍ピサロを渡辺謙さんが演じ、彼に付き従う兵士サリナスを、僕が演じます。題材も、もともとの演目も海外のものというのが初めてなので、新たなチャレンジにわくわくしています。

――また新しい田中さんが生まれそうな舞台ですね。

はい、絶対に『ピサロ』で新たな自分を生みます。生まなきゃと思っています。

田中俊介

プロフィール
田中俊介(たなか・しゅんすけ)
1990年1月28日、愛知県生まれ。代表作に映画『ダブルミンツ』 (内田英治監督)、『デッドエンドの思い出』(チェ・ヒョンヨン監督)、『恋のクレイジーロード』(白石晃士監督)、舞台『転校生』など。映画『タイトル、拒絶』(山田佳奈監督)、『恋するけだもの』(白石晃士監督) などの公開を控える。 

 

舞台情報
PARCO劇場オープニング・シリーズ 第1弾『ピサロ』
2020年3月13日(金)~4月20日(月)
@PARCO劇場
https://stage.parco.jp/program/pizarro/