THE ORAL CIGARETTES 山中拓也が紡ぐ“歌詞”の舞台裏 凛として時雨TK、尾崎世界観の凄み、セラピーとしての作詞を語る

山中拓也

ロックバンドTHE ORAL CIGARETTESのボーカルで、楽曲の作詞作曲を手掛ける山中拓也さん。3月2日に発売された初のフォトエッセイ『他がままに生かされて』(KADOKAWA)では、ファンを魅了する山中さんの“言葉の力”にフォーカスしながら、壮絶な半生がつづられています。そこで、今回は山中さんの言葉の原点に注目し、高校生のとき初めて手掛けた曲のことや「歌詞がすごい!」とリスペクトしているアーティスト、そして初のエッセイに込めた思いについて話していただきました。

撮影:石川咲希(Pash) 取材・文:東海林その子
記事制作:オリコンNewS

歌詞を書くのは“自分のセラピー”をしている感覚

山中拓也

――初めて作詞作曲をしたときのことは覚えていますか?

覚えています。今思い出すと笑えてくるんですけど、確か「希望の光」っていうタイトルで(笑)。多分高校生のときに書いて、そんなに苦労はしなかった記憶がありますね。歌詞で悩んだことって、去年くらいまでなかったんじゃないかな。当時は世界観やメッセージ性というものをそこまで気にしていなくて、ただただ音にハマりのいい言葉を乗せていく感覚で詞を書いていました。

インディーズの頃は直接的な言葉で書くのがしっくりこなくて、世界観や架空のストーリーを作り上げて、伝えたいことを遠回しに伝えていました。今では直接的なメッセージを取り入れるようになったので、人生のいろんな分岐点、転機みたいなところで歌詞の書き方は変わっていると思います。

山中拓也

――文章で表現することに照れがあるという人も多いですが、歌詞を書くことに恥ずかしさはありませんでしたか?

そこまでない方ではあったんですけど、いまだにダイレクトなラブソングを書くのはすごく恥ずかしくなりますね。特に昔は、直接的なメッセージを伝えるのは恥ずかしかったですし、正直ダサいって思っていました。今はその強みをすごく感じるし、それを歌うことによって自分自身が奮い立つ瞬間があるので、意外といい方法だと分かってきました。

山中拓也

――映画や本など、音楽以外からインスピレーションを受けることもあるのでしょうか?

映画は結構観ますね。洋画だと英語で(実際に)喋っていることと、日本語の字幕が全然違うみたいなことがあるじゃないですか。「こういう言い回しするんだ」とか、「こう解釈するんだ」っていうのが面白くて、観ている途中に止めて確認したりします。

ただ、歌詞を作ることに関しては自分のセラピーをしているような感覚。頭の中で回っているものをいかに自分に納得させながら文や詞に落とし込んでいくかという作業なんですよね。そのとき感じていることや自分の思い、あとはよく悩んで落ち込んだりもするので、その状況をそのまま歌詞にすることが多いんです。だからインスピレーションを受けて歌詞にするより、自分から出てくる等身大な言葉しか使っていない気がします。

ヤマタクがリスペクトする歌詞と、自分を奮い立たせる曲 TK、尾崎世界観/SIBITT

山中拓也

――だからこそ、強く響く曲が生まれるんですね。では、歌詞の面で影響を受けたアーティストや楽曲を教えてください。

正直に言うと、歌詞で影響を受けた人はあまりいないんです。でも「すごいな」と思える人はいます。

まずは、凛として時雨TKさん。例えば、“リアルな真っ赤”から“幻想のカラフル”みたいなものを描くメリハリは、TKさんにしか作れない世界観だと思っていて。その冷たさと幻想的な温かさのギャップは自分の世界観にも入っている要素なので、そういう面では共通していたり、影響されている部分があるのかもしれません。TKさんの曲は、言葉数は多くないんですけど、“夕景”や“鮮やか”、“赤”というよく使う言葉があって、それがいろんな曲に散りばめられていても全然違和感がないんですよ。              

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

そして、クリープハイプ尾崎世界観さんも。尾崎さんみたいな文章を書くのは無理です!っていう意味での尊敬ですね(笑)。内容はもちろん素晴らしいんですけど、発想力や物の捉え方が本当に秀逸だなと思います。例えば『傷つける』という曲の「愛なんてずっとさ ボールペン位に思ってたよ 家に忘れてきたんだ ちょっと貸してくれよ」っていうフレーズとか、いろんなところに気を配っている人じゃないと、ボールペン1つに対してこんな例えはできないと思うんですよね。自分では持てない視点を持っていることに、毎回すごいなと思わされます。僕はそういう表現よりも、人間のすごく深めな闇だったり、みんなが目を背けたくなるようなところをわざと突いたドロッとした部分を表現することがすごく好きなので。

山中拓也

歌詞でいうと、僕が好きになるのは“痛み”みたいなものが入っている曲が多いので、自分も歌詞にそういうものを自然と入れてしまうのかなと思います。「痛みこそ重要である」というのが自分の中のテーマというか、ずっと感じ続けていること。痛みを知らない者が優しさを知っているはずがないし、より傷んでいるやつのほうが好きになっちゃう美学みたいなものがあるんです。痛みを持ったままダメになってしまう人が多い世の中だったりするけど、そういう人たちに「今の痛みは無駄じゃないぜ。というか、それが人間としての必要条件なんだ」と曲を通して伝えたいんです。

山中拓也

――尾崎世界観さんは小説も書かれていますが、山中さんも書きたいと思うことはありますか?

尾崎さんにはどんどんやってほしいなと思いますけど、僕はどうなんすかね(笑)。自分の中に物語を作って歌詞に落とし込むっていう作業も多かったので……、まあ、気が向けばやろうかな(笑)!

山中拓也

――ぜひ読んでみたいです! 今のこのコロナ禍という状況を不安に思ったり、前に進めないと感じたりと、まさに“痛み”を抱えている人は多いと思います。そういうときに音楽で元気をもらう人もいますが、山中さんが自分を奮い立たせたいときに聞く曲はありますか?

僕、自分を奮い立たせるために曲を使うことがなくて、逆に(気持ちを)落とすために使うんですよね。「こんな世界クソだ」とか「どうでもいいわ」って思うくらい落ちたとき、その音楽に溶け込むっていう表現が一番近いと思うんですけど、敢えて最悪な状態まで(自分を)落としちゃう。そうすると、もうあとは光しかないっていう状況になってくるんです。すごくしんどい作業なんですけど、下がっている気持ちをより下げるというか、その世界観に浸るのがいいのかな。今しか感じられない最悪な空気感みたいなものに浸るためにかける音楽は結構ありますね。

山中拓也

それこそTKさんはもちろんですが、志人(SIBITT/シビット)さんの曲にはかなりお世話になっています(笑)。志人さんはラップというか、もうお経みたいな感じなんですよね。それから、インディーズ時代にライブばっかりやって、だんだん心が荒んでいったときにめちゃくちゃ響いたのは、GOOD ON THE REELというバンドの歌詞。刺されている感じがするけど優しくて、でも痛さがあるんです。あと一番聞いているのは、lee (asano+ryuhei)さんのアルバム。部屋を真っ暗にしてこういう曲を流してどん底まで落とすのが、自分の作業の中でしっくりきています。

山中拓也

――“とことん気持ちを落とすための曲”があるんですね。これまで山中さんが書かれた中で、これからもずっと大切にしていきたいと思う曲はありますか?

何曲かありますけど、作ってよかったなと思っているのは『接触』という楽曲。人間の本質や、何が本当の美しさなのかということ、生まれ落ちた瞬間にどういう使命を持って生きていかなくちゃいけないのかとか、どの時代にも共通して人間が考えることにフォーカスして書けた気がするんです。70代80代の人も、逆に10歳の小学生が読んだときにも通じる部分があるんじゃないかなと思うし、ちっちゃいときからずっと心の底から思っていたことを書けたので、歌っているときもめっちゃ熱が入りますね。

山中拓也

――熱が入る曲は、ファンの方の反応も違うものですか?

なんか、すごく反応がいいんですよ。『接触』はもともとカップリング曲なんですけど、人気が高いです。だからこそ、むちゃくちゃ苦しくなったとしても、頑張れるんですよね。これを乗り越えたら、今まで書けなかった素晴らしいものを作れるのかもと思えるので、追い込むことは意味があるのかなと思います。

「上から目線に立たない」。ファンと“横並び”であることにこだわり抜いたエッセイ

山中拓也

――そして、先日発売になった初エッセイ『他がままに生かされて』についてもお話を聞かせてください。こちらの本はどういった経緯で制作に至ったのでしょうか?

オファーをいただいたのが、すごくいいタイミングだったんですよね。以前インスタライブをしたときにちょっと酔っ払ってしまって、本当は喋りたくはなかったんですけど、過去のあれこれを話してしまったことがあったんです。

それまでも、ファンからの相談事や悩みがSNSのDMで飛んでくることはあったんですけど、それ(インスタライブ)を聞いて元気付けられましたっていうメッセージがすごく多くて、こういう自分の最低だった部分を晒しても元気や勇気に変えてくれる人がいるんだとわかって。自分の人生を通して誰かを勇気づけられるのであれば、ここまで駆け抜けまくってきた人生を一度整理したほうがいいなと考えていたときに、KADOKAWAさんからのお誘いをいただいたんです。

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA
――自分の半生を振り返るという作業はいかがでしたか?

僕は、定期的に自分の人生を振り返って、どういう人間なのかという確認をよくするので、その作業に対して抵抗はなくて。最低だったけど最高の人生だったなと思いますし、ここまでの選択の中に後悔はあまりなかったので、なるべくしてなった人生だなというか。たとえそのときは肯定できなかったことでも、今となっては自分を作るためにすごく大切な選択だったなと思えましたね。

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA
――音に乗せる歌詞とは違う、文章ならではのこだわりはありますか?

自分の人生を他人に晒すという行為に簡単にOKは出せないので、本当に隅々までこだわりました。特に「上から目線に立たない」ということですかね。芸能界にはすごい才能を持っている人が溢れているけど、自分はすごい人間だなんてまったく思っていないし、みんなと横並びなんだよという感覚というか。「俺はこう感じてきたから、お前らもこうやれ」じゃなくて「僕はこう感じました。みんなも参考にしてね」っていう、上から偉そうに言っている感じを絶対に出さないというのは意識したことです。              

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA
――山中さんは楽曲だけでなくアートワークやビジュアル作りへのこだわりも強いと思うのですが、このエッセイでも構成やデザインのご希望は伝えられたのでしょうか?

……かなり(笑)。この本は自分の分身になるんだろうなっていう感覚があったので、下手したら曲以上に責任感が強かったなと思います。うまく表現できていなかったら自分としても不甲斐ないし、この本を通してそういう人間だなって思われるだろうから、自分が生きてきたことを正直に伝えられる本にできたらいいなと思っていて。これから先ずっと残っていく自分の本だから、気に入らない部分を残したまま出すのはやっぱりイヤだし、読んでいてずっとワクワクできる本にしたかったんです。だから順番や構成、写真についてもすごく口出しをさせてもらいました(笑)。

曲だと、演奏があれば歌詞に世界観を色付けできるんですけど、今回は文字や紙をめくるっていう行為だけで勝負しなければならないので、そこが難しかったですね。改めて本を書く人はすごいなって思いました(笑)。

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA
――ここに至るまでは紆余曲折があったんですね。

はい(笑)。一番大変だったのはKADOKAWAさんだと思います(笑)。

――そんな山中さんの強い思いが詰まったエッセイを読むみなさんへ、ぜひメッセージをお願いします。

ファンの子たちはある程度、僕の人間性を知っていると思うんです。普段相談してきてくれるけど、ひとりひとりに応えられない分、それを踏襲した上でこの本を作ったから、その悩みを解決してくれたらいいなと思うし、オーラルの音楽への向き合い方に生かしてほしいなと思っています。

山中拓也

オーラルや僕を知らない人に関しては、運がよければこの本からオーラルに辿り着いてもらえればいいなくらいの気持ちですね。こんなこと言ったら怒られるかもしれないですけど(笑)。何より、自分にコンプレックスを持っていたり、弱さを肯定できなかったり、半ば人生を諦めていたり、転職しようと悩んでいたり……そういう人たちを励ますことができる一冊になってほしいなと思っていて。自分でもいけるな!みたいな(笑)、みんなを勇気づける材料になってほしいんです。そこからオーラルまで辿り着いてくれとは言いませんけど、もしこの人の言葉を聞きたいなと思って曲を聞いてくれたらすごくうれしいなと。でも一番の目的は、みんなの人生が開けることなんです。

山中拓也

――では最後に、山中さんにとっての“言葉”とは?

健康診断みたいな(笑)。荒れているときって言葉も荒れるし、お金がないときはそういう感じの言葉遣いになる気がするんですよね。言葉を聞けば、その人がどういう状況にあるのか、どういうメンタルなのかがわかるツールでもあると思うんです。僕も自分自身のセラピーのために歌詞を書いているし、うん、健康診断みたいなものです。

書籍情報

山中拓也『他がままに生かされて』/株式会社KADOKAWA

『他がままに生かされて』(KADOKAWA)

ロックバンド・THE ORAL CIGARETTESで、作品の作詞作曲を手掛けるフロントマン、山中拓也。彼が紡ぐ、人間の本質を表す言葉は、なぜ多くの若者を虜にするのか。そして、いかに生み出されるのか。

生死をさまよった病、愛する人の裏切り、声を失ったポリープ手術、友人の死etc. そこには数多の挫折や失敗があり、周りにはいつも支えてくれた家族や仲間、恩人たちの存在があった。山中拓也は、これまでもこれからも、他に生かされて我がままに生きていく。

そんな彼の半生や人生観。過去と未来のこと。今の時代に伝えたいことを綴ったエッセイ。故郷・奈良の思い出の地巡り、ドイツや国内で撮影した作品写真、貴重なレコーディング風景など撮り下ろし写真も多数収録する。2021年に30歳という節目を迎える、人間・山中拓也のすべてをさらけ出した一冊。

山中拓也の吐く言葉は、何よりも弱くて強い。

プロフィール

THE ORAL CIGARETTES

THE ORAL CIGARETTES

2010年奈良にて結成。人間の闇の部分に目を背けずに音と言葉を巧みに操る唯一無二のロックバンド。メンバーのキャラクターが映えるライブパフォーマンスを武器に全国の野外フェスに軒並み出演。

リリースした作品は常に記録を更新し、2020月4月リリース5th アルバム『SUCK MY WORLD』は前作に続きオリコン初登場1位を獲得。

2017年6月には初の日本武道館公演、2018年2月には地元関西にて大阪城ホール公演を開催し両日とも即日完売。2018年9月からはアリーナ4公演を含む全国ワンマンツアー『Kisses and Kills Tour 2018-2019』、2019年5月には初のアジアツアー『KK Tour 2019 in Shanghai/Beijing/Taipei』を開催した。そして、9月には大阪泉大津フェニックスにて初の野外イベント『PARASITE DEJAVU ~2DAYS OPEN AIR SHOW~』を開催し、2日間で約4万人を動員した。

2020年新型コロナウイルス感染拡大の影響により、COUPLING TOUR 2020『Tonight the silence kills me with your fire』、JAPAN ARENA TOUR『SUCK MY WORLD』、Zepp Tour『SUCK MY WORLD』が立て続けに開催延期・中止となったが、9月にコンセプトを強く意識した公演『ORALIUM』at KT Zepp Yokohamaを2days開催した。

BKW!!(番狂わせ)の精神でロックシーンに旋風を巻き起こしている。

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この記事について
俳優・歌手・芸人・タレントらの趣味嗜好を深堀りしつつ、ファンの「好き」を応援。
この記事は、LINE初の総合エンタメメディア「Fanthology!」とオリコンNewSの共同企画です。今後、さらに気になる人の「これまで」と「これから」をお届けしていきます。
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